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    gorogoro_ohuton

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    オタクのたわごと

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    本アカからの再掲
    【狂聡】44と19の小話

    【狂聡】44と19の小話待ち合わせの場所にいくと、ガードレールにもたれかかり、狂児は煙草をふかしていた。街灯がスポットライトのごとく、その佇まいを照らす。黒のコート、黒のスーツ、そして、黒のセンチュリー。聡実には一枚の絵画のように見えているが、きっと、行きかう人々には異様な光景に見えているのだろう。
    明日の朝の天気予報は雪マークだった。積もらないようだが、交通機関の乱れが予想されるという。本当は今夜の最終の新幹線で東京に帰る予定だったが、仕事の都合をつけた狂児が、成人のお祝いさせてというので、こうしてノコノコとその誘いにのってしまい、五分程その姿を眺めていた。
    狂児と付き合い始めてからおよそ一年経とうとしているが、一緒にいる時間よりも、離れている時間の方が長い。狂児は東京で任された店の視察や、祭林組と懇意にしている組との会合で月に二、三回程東京を訪れているが、毎回会えるわけではない。最後に会ったのは11月も終わりに近づいた頃だ。12月は忘年会や組の行事が多く、シノギの稼ぎ時でもある。元々、12月は連絡できんかもしれんけど、なんかあったら遠慮なく連絡してなと言われていたが、本当に音沙汰がなかった。普段なら、光る犬がおったと電飾のように光っている首輪をつけた犬の写真を送ってきたり、虹が出てたといって虹の写真を送ってきたり、ちゃんと飯食っとる? などとりとめもないメッセージを送ってきたりしたくせに、何の音沙汰もなく、いよいよ死んだのかと思った。仕方がないとはわかっていても、一瞬でもクリスマスを一緒に過ごせないかと考えてしまったことは汚点でしかない。
    ふぅ、と狂児が吐き出す息は白い。時折、寒そうに肩を竦めている。聡実の指先もすっかり冷え切っていた。キャリーバッグの持ち手を握る手は氷のようだ。静かに狂児に近づくと、狂児は嬉しそうに手を振り、携帯灰皿で煙草の火をもみ消す。ヤクザなのにちゃんとそういうところは守るんだなと未だに感心してしまう。
    「久しぶりやな、聡実くん。元気してた?」
    「ええ、まあ…狂児さんは?」
    「元聡実くんの顔みたら元気になったわぁ。ほれ、荷物はこっち。寒いからはよ乗り」
    狂児は聡実の手からキャリーバッグを奪い取ると、ひょいと長い脚でガードレールを乗り越え、センチュリーのトランクに押し込んでしまう。聡実はつま先立ちになってガードレールを乗り越えると、ぶつけないように慎重にドアをあける。車内はほんのりと煙草のにおいが残っていた。狂児は気を使って聡実の前では煙草を吸わないようにしているが、久しぶりに嗅ぐ煙草のにおいに安心感を覚えた。
    「聡実くんもついにハタチかぁ…成人おめでとう」
    「…ありがとうございます。まぁ、僕まだ二十歳になってませんけど」
    「細かいことはええやん。こういうのは雰囲気が大事やん」
    「はぁ、そういうもんですか?」
    「そういうもんよぉ。聡実くん、腹減ってない? どっかで飯食う? お祝いに何でも食べさせたるよ」
    狂児が少しでも身じろぎする度、ふわりと嗅ぎなれた香水が香る。聡実はとんとおしゃれに疎く、香水なんかつけたことはない。同じ学科の女子学生だけでなく、おしゃれに気を使った男子学生からも香水のにおいがする。しかし、それはなんとなく安っぽく感じた。ブランドも何もわからないが、狂児がつけている香水はそれなりに値段がするものなのだろう。そもそも、狂児はヤクザの若頭補佐で、それなりの身なりをしていないとハクがつかないに違いない。200万の時計もさることながら、スーツもオーダーメイドときいている。
    煙草と香水が混じりあった香りにくらくらと眩暈がする。車の中は狂児のにおいが充満していて、少し低めの体温が足りないのに、抱きしめられているように錯覚する。性欲は同年代と比べて薄い方だと思っていたのに、狂児と体の関係をもつようになってから、どうにも体が作り替えられてしまったらしい。ひとりでシても物足りず、若い体は溌剌とした性欲を持て余していた。
    「…なんでもええの?」
    「もちろん。お祝いやし、なんでもええよン」
    上着の内ポケットからスマホを取り出した狂児は、懐石と焼肉どっちがええ? と画面の上で指先を滑らせる。
    「………狂児さんがええ」
    「………オレがええって、どゆこと?」
    濃いクマが刻まれた切れ長の目を丸くし、ごくりと狂児の立派な喉仏が上下する。
    「…狂児さん家連れてって。お祝いやし、なんでもええよってゆうたやん?」
    アカンの? とついと狂児から目をそらすと、急にエンジンが唸り声をあげる。急発進したセンチュリーはゴミゴミとした駅前を駆け抜け、少しずつ速度を上げる。
    「オレでええの?」
    「…何度も言わすな、狂児のアホ」
    「嬉しいなぁ…聡実くんになら骨までしゃぶってもらいたいわぁ。オレは聡実くんのもんやから、いくらでもあげるよぉ」
    「キショイわ」
    「ぐっさぁ! 可愛いこと言うてくれるかと思たら…でも、そういうところが可愛いんやけど」
    「うるさいです。もう、喋らんといてください」
    聡実はいけずやなぁと笑う狂児の顔を直視することができず、何を言ってしまったのだろうと公開にさいなまれながら、膝の上でぎゅっと握った拳を見つめていた。
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    gorogoro_ohuton

    MOURNINGモブ目線※捏造
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くん
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くんお客様のお出迎えために駐車場で待機して早10分。僕はソワソワと遅々として進まない腕時計を眺めていた。僕と一緒にお客様をお出迎えするのは、外商部チーフの茂田さんだ。茂田さんはここ阪京百貨店勤続20年のベテランで、物腰柔らかなな50間際の男性だ。すらっとした痩せ型の体でスーツをビシッと着こなし、営業トークもとても上手い。外商部で1番の売り上げを誇っている稼ぎ頭だ。
    不景気ということもあり、全国の百貨店に共通していえることだが、外商部はどちらかといえば縮小傾向にある。一昔前はお客様のご自宅にカタログや商品をお持ちした時代もあったときいているが、それは僕が生まれるよりも昔の話だ。もちろん、長年のお客様の中にはご自宅にお伺いし、商談を進めることもあるらしいが、そのようなお客様もほんの一握りだ。近年は、カタログをお送りしてからご自宅にお電話をし、こちらにお越しいただくことが多い。僕が働くスーツ売り場でも、茂田さんや外商部の方たちがお連れしたお客様を対応することがある。そのほとんどが僕のような新卒2年目のペーペーではなく、ベテランの先輩たちが対応していた。
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