生贄よ疾く死に候え予定では『そう』だった、でも任務や諸般の事情で『そう』はならなかった。その日屯所に土方はいなかった。斎藤は他の者から花街へ連れて行かれた。飯も食わせてもらえたし女は綺麗で優しくて悪くなかった。他の奴からは羨ましがられた。しかし斎藤はわからないなりに何故かガッカリした、この人たちと俺はこの日から全く違う道を歩くんじゃないかと予感がした。
事実、土方を抱いた新人たちは大量に死んだ隊士たちの中に紛れて一緒に死んでしまった。
あの人には知らず知らず他人の運を吸い取ってしまうような宿命があるように見えた。身体が良すぎて満足しきって極楽が見えたともうどうにもならなくなってしまうのだろうか。
土方と寝た者にしかわからない呪いじみた運命の剥奪。
高杉の奇兵隊にも似た、どのような者であれ隊士として入れば最強になるよう手入れをされる、生贄の祭壇に捧げられる戦士のように、美しいものを抱くことを許される。
代わりに必ず死ねと判を押されるが如くの…一瞬の誇りと輝きを与えられる代わりに…
全て斎藤の思い込みかもしれない、まんまと逃げただけで生き残ったやつもいたかもしれない、真相は、永遠にわからないままだ。
斎藤は土方と寝なかった、それから先も女しか相手にはしなかった。
彼に性欲を抱くことは生涯無いまま、カルデアというあの世、毎日美味い飯が食えて結核も治る極楽に来てでもそれは変わらないまま…
しかし斎藤が来たとき既に土方の横に座っていた森長可とかいう過去から来た男、簡単に彼を抱き、抱かれ、それでいてなお、横で一緒に血まみれになって楽しそうに笑っている男が絶対に許せないのだろう。
結核にもならず、死にもせず、そうかと思えば簡単に死地へ飛び込み…必ず帰って来る。理解ができない、あんなものは、誠では、無い。