【創作】狭間の少女それは何かの狭間に、外すのを忘れた去年のカレンダーと壁の間、古い部屋の剥がれかかった壁紙の裏、二つに割れた大岩の割れ目、足と大地の触れ合う所、そういう場所に潜む門。
選ばれた者だけが人生でただ一度きり門を通ることを許され、まるで時が止まっているかのような常春の館に通される。
たくさんの誰かがいるようで誰もいないその館で出会えるのは車椅子の少女だけ。
ゲルダと名乗るその角が生えた不思議な少女は、客人の悩みを一つだけ叶えてくれる。
彼女の部屋にある大きな本棚に、あらゆる困難を解決する手筈が書かれているのだ。
きっとその人の一生で一番困った瞬間に、助けが全く現れないときに、太陽の匂いがする隙間があったなら、退屈している彼女のほんの暇潰しとして入り込んでみる価値はあるかもしれない。