【創作】WANWAN STORYどこかの山にひっそりと佇むお屋敷で、4、5匹の犬たちが飼われている。
その中の1匹、ステビアは飼い主から与えられた獲物を食べる役目だ。
ひと月に1回ほど、地下室の天井から、生きたまま獲物が裸で吊るされている。
獲物には必ず切り傷があるので、その血の匂いを嗅ぐとステビアはもうどうにも涎が止まらなくなって右側と左側で形が違う大きな口で肉に噛み付き、骨ごと噛み砕いて美味しそうに獲物を食べ始める。
しばらくご飯を貰っていないのでなんでも美味しい。お腹いっぱい食べられる。
全部食べ終わってお腹がいっぱいになると、髪の毛とか爪とか分厚い踵の皮膚とか、そういう消化に悪いのをまとめて吐く。犬なのに猫みたいだね。
そして、やっと我に返って口元に付いた血を手で拭いながら飼い主から呼ばれるまでこっそり泣いているのだ。
たまに飼い主がその部屋に訪れることがある。血と脂がべったり付いた服のままなので、お風呂場で全身洗われて新しいシャツとスカートを着せてもらう。靴下も履かせてもらう。頭も撫でてもらう。飼い主は自分の口が変なのも全然気にしない。そういうのが多分ちょっと嬉しいので、さっきのことはちょっと忘れて美味しいおやつなどを貰っている。
ステビアという犬の話。