啓護くんが怪我をしたとき僕は彼のすぐ傍にいた。
その日は天気が良くて、いろいろ買い出しもしておかないとって二人で出かけたんだ。僕はドラッグストアで買った洗剤とか水物と食料品の入ったエコバックを両手に下げていて、啓護くんはトイレットペーパーの袋と僕の方に入りきらなかった荷物を少しだけいれた袋を持っていた。これ以上は持てないな、と一度家に帰ることにした。
交差点で信号待ちをしている時、えっと、僕は何をしていたんだっけ。そうだ反対側の歩道にいる人の服の色が今度描く絵本の表紙に合う気がすると思って絵の具の混ぜる配分をぼんやりと考えてたんだ。啓護くんも何を話すでもなく、普通に信号が青になるのを待っていただけだ、なんでもなかったんだ、そんなこと人生に何万回だってあるでしょう?
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