鉄錆の味がする。フリスクは手鏡に映った自分の左の頰を眺めて改めて失敗を悔やんだ。
子供の頃にリンゴやパンに例えられた丸みは落ちつき、幾分か大人っぽくなったと自負していた頰は今、痛々しく腫れ始めている。
明日の朝にはもっと酷い色になることだろう。口の中も切ってしまっているので少し表情を変えるだけでビリビリと痛む。
「あちゃー…ママ怒るかなぁ」
まだこの状況を知らせていないトリエルが、この顔を見たらどうなってしまうのか。怒ると怖い養母を想像し、フリスクは震え上がった。
そしてそれ以上に悲しませてしまうであろうことがため息を深くさせる。まったく、今回は本当に下手を打ってしまったものだ。
「ほい、冷やしなよ」
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