類似1,
「君の目、紫陽花みたいだね」
初めてそう言われたのは、いつの日だったか。覚えていない。異教徒改宗と追いかけ回したあの日だったか、ようやく国になったあれからだったか。
「…は?」
太陽は既に傾き、暖色がそう言ってはにかんだ男を染めていた。何を、こんな状況下に。
2,
プロイセン君の目は綺麗だ。基本的に容姿がいい国という存在の中でも、僕は彼の見目が一等好きだった。その綺麗で日の光を浴びてキラキラと輝く銀髪は勿論、薄い唇も、筋の通った鼻も、ゲルマン人らしい彫りの深い几帳面そうな顔立ちも、全部。最後に関しては…まあ、黙っていればだけれど。ともかく、僕は彼の容姿が好きで、その中でも特に好きだったのが彼の瞳だった。初めて見た時の衝撃は忘れられない。それは真紅、鮮やかな赤色だった。あまりに綺麗で、手元に置きたいとまでは思わなくとも、僕は彼の瞳が大好きだった。
紫陽花は土の性質によってつける花の色が違う、という話をどこかで昔聞いたことがある。アルカリ性だと赤で、酸性だと青。その話を初めて耳にした時、きっと君の事なんだと本気で思ったものだった。ウィーン会議。そう、あの時までは赤で、そこからは青。青、といっても半分だけだったけれども。ドイツくんが生まれて、色々面倒事が片付いて、久方ぶりに君に会った時。酷く残念に思ったことをまだ覚えている。詰まらない。真の意味で誰のものでもなかった君が、誰かのものになってしまったような気がした。君の髪には不純物のない真紅が似合う。君自身も変わった気がして、いや、実際変わったね。まあともかく。君を変えたドイツくんがずっと嫌いだったよ。だから、何度も喧嘩したことも許して欲しいな、なんて。言う資格ないけどさ。
「ねえギルベルトくん
僕、思うんだ。」
反応はない。
「君、やっぱり紫陽花なんじゃないか、って」
鏡の向こうの眉が少し訝しげに顰められた。
「生まれつきは赤。ドイツくんが産まれてからは青。環境によって変わる花みたいじゃない?」
興味がなさそうではあるが、一応は聞いてくれているようだった。
「僕ね、ずっっと悲しかったんだよ?君の目、兎みたいで大好きだったのに。」