L.letterきっかけは些細なことだったはず。たまたま急ぎの伝言を頼まれ、メールを送るよりも直接伝えたほうが早いと思ったから、受付のヒバリから適当な紙とペンを借りてそれを書いた。半ば書き殴ったそれはお世辞にも上手いとは言えない。ただ、受け取った彼の言葉は今でも鮮明に覚えている。
―――お前は、こういう字を書くんだな。
なんてことない紙をジッと見つめながら紡がれた、視覚からそれを味わっているような声。
あの時の真意は、わからないまま。
『アーディルへ
先日のサバイバルミッション、ご苦労だった。皆、大きなケガもなく帰還してくれて何よりだ。これも、お前のおかげだな。何か欲しいものはないか? お前の日頃の働きを労いたい。返事を待っている。 ジュリウス・ヴィスコンティ』
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