とにかく前向きな宋嵐【雪渡】
宋子琛道長が義城を出てさいしょにむかったのは町からそう離れていない水飲み場だった。かつては街道が敷かれ、人の往来もあったのだが、義城が廃れてからの数年間人が寄り付かないばかりか積極的にそんな町があったことを忘れさせるように街道が架け替えられ役目を終えた。
宋道長は水飲み場や休憩のためのあばら家のわずかに残った基礎部分の近くをうろうろと注意深く歩き回り、やがて双眸を川に面する林へと向けた。
花崗岩を多く含む落石は木漏れ日を受けてときおり乳白色にきらめき踏み入る者の目をくらませる。宋道長も迷いの森の誘惑に抗うように一歩一歩と歩を進め朽ちた大木のウロで足をとめた。
「みつけた」
と音のない唇がつぶやく。
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