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    メギド/クラウス×バフォメット、アンドレアルフス×マルコシアス、ベリアル×アイム
    食物語/龍×燕
    ゾンビランドサガ/幸太郎×さくら

    その他:気が向いた時に気が向いたものを気が向いただけ

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    宴帰りの龍井が子推ちゃんを抱く話(健全なところまで)

    #龍燕
    longYan

    部屋に戻るといつものように子推燕が布団に丸まってベッドを温めていた。
     まるで越冬する渡鳥のように、冬になると子推燕は龍井のベッドに巣篭もりするようになる。それは空桑に住まいを移しても変わらない。
     そんな彼を観た空桑の食神代理は彼に専用の部屋を用意すると打診していたが、

    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

     と断っていた。若はそのあたりの機微に聡いので、それだけで子細理解したようだった。
     そもそも若は何も言わずとも龍井の部屋の入り口を広くして、特に窓の大きな部屋を用意してくれている。部屋も他の食魂より幾分か広い。特別扱いだ、と騒ぎ立てた輩も幾人かいたが、彼らが部屋に押しかけてきた折にたまたま広さの理由を示すことになって以降、表立って龍井に不満を漏らす者はいない。
     子推燕の持ち部屋はまさに『小屋』なのだから、足して割ればそう特別扱いというわけでもない。

     龍井は酒宴の余韻の残る正装の裾を捌き、ベッドでこんもりと盛り上がった塊へと近づく。
    「子推さん、帰りましたよ」
     ちら、と端をめくって声を掛ければ、子推燕は中から目だけを出してこちらを見やる。
     金色の双眸をいかにも、今まで眠ってましたと言わんばかりに顰めている。

    「お酒の匂いがします。それに、化粧の匂いも」
    「布団で待ち侘びる貴方に早く会いたくて、まっすぐ帰りましたので」
    「待ち侘びてはおりませんよ……」

     つれない言葉を残し,布団に潜り込む子推燕。龍井は布団に手を差し込み、ぬるい体温の素肌に触れる。
     脇腹を指先で撫でればびくりと体が引っ込んだ。

    「冷たいです」

     文句を言われるが、声音はそう嫌がってはいない。龍井は布団に身をかがめる。

    「では貴方の翼で温めてください。布団、捲ってもよろしいですか?」
    「……着替えてきてください。あと、湯も浴びてもらえると助かります…………」
    「せっかく装いを整えたのですから、子推さんに見ていただきたいのですよ」
    「さっき見ました」
    「もっとです」
    「……」

     子推は渋々といった様子で再び頭を出す。
     布団に冷気が入るのが嫌という様子で,肩から下は絶対出さない。

    「新しい衣ですか」
    「ええ。今日の酒宴に合わせて用意させたものです」

     今日、空桑の若はとある神から招かれた酒宴に幾人かの食魂を伴って参加していた。参会した龍威はそれに合わせ、衣を新調した。朝から子推燕に見せたかったのだが、あいにく彼はどこかに飛んで見つからなかった。彼が姿を隠すのはよくある話だし、そういう際は放っておくと決めている。
     せっかく夜は戻ってきてくれていたのだから、それならば衣を解く前に見せておきたかったのだ。

    「……よくお似合いですね」

     子推燕は言いながら指先をちょっと布団から出し、絹に触れる。

    「この部屋に戻った時、★の残り香が漂っているのを感じました。……この衣にはよく似合ったでしょうね。髪には、まだ少し匂いが残っていますね」

     じっと龍井を眺めて感想を告げてくる、その大きな満月の瞳には己の姿が映っていた。
     その友人のかんばせの美しさへの礼儀とばかり口付ける。
     満月のように目が見開き――そのまま嫌と言わんばかりに布団の中の手から押し返された。

    「…嫌なのわかっててやりますよね、龍井さん」

     子推燕の唇に、己が引いていた紅がうつっている。
     彼はこれが嫌なのだ。そして龍井はこれがしたかった。

    「子推さんが嫌いでも、私は化粧した貴方は好きですよ?」
    「化粧なんて意味のないものです…」
    「そうですか? お綺麗ですよ」

     不満げな子推の顎を取り、親指で紅を伸ばしてやる。

    「しかし私のものではやはり似合いませんね。貴方はもっと青みが強い方が似合います」

     されるがまま顔を眺められ、子推燕はあからさまに溜息をつく。
     それでも振り払いはしないので、この人は優しい。

    「新しいものは嫌いな貴方なのに、どうして化粧ばかりはわざわざ新しいものを買い寄せて、私に塗りたがるのでしょう」
    「貴方に似合う理想の色を求めるのは楽しいものです。貴方が最も美しく映えるものは、風をきり春の空を舞う姿ですが、それだけではない貴方を私はもっと見たいのです。美しい素材に意匠を加えて彩りを変えることに、何が悪いことがありましょう。一番貴方の見栄えの良さを知っているのが私なのですから、もうひと手間、手をかけたくなるのも道理です」

     良い素材をどうするか、それは何事にも通じる。龍井は己の食魂としての容姿も気に入っていたが、それと同じように子推燕の姿も愛している。本人は不満を漏らす翼も含めて、子推燕はどこまでも龍井に新鮮な発想を沸かせる美しい存在だ。
     言葉を尽くす龍井に対して、子推燕はこれみよがしにため息を吐き、そして目元まで布団に再び潜る。

    「……そろそろよろしいでしょうか。今夜はいつもより何故か部屋がよく冷えます。そこまで私を気に入ってくださっているのなら、早く温めてください」

     寒いので、と付け加えて子推燕はこちらの手を引く。布団の隙間から、肌が覗いている。

     布団をめくりあげれば、翼で肌を隠すだけの裸の子推燕が露わになる。
     子推燕は裸で寝るのが好きで、更に言うと人肌の温もりを好む。
     彼の言う「温めてほしい」は本来、そういう意味だ。
     しかし龍井としては別の意図のようにしか聞こえない。子推燕もまた、その別の意図を求められたとしても構わないのだから互いにとって何も問題はないのだが。

    「…あかりを消して……あと、寒いです。布団を取らないでください。そしてあなたも脱いでください」
    「じきに空調も調います。布団は汚れたら嫌なので必要ありません。私は後で脱ぎます」
    「化粧が…」
    「紅を引いた私もよいものでしょう?」

     顔を近づけ、首を傾げて尋ねてみる。子推燕の目元が少し赤くなる。彼は嘘がつけない。

    「…………でも……」
    「じゃあ良いですね」
    「ん」

     次に不満を言われる前に唇を塞ぐ。
     舌を絡ませながら布団代わりに抱きしめる。あわく鳥肌を立てる子推燕の体を温めるように、手のひら全体で暫く肌を弄っていれば、すぐに子推燕は従順になる。
     唇を離せば、紅のうつった唇で名残惜しそうに舌を覗かせる。頭を引き寄せられ、抱きしめる龍威を包み返すように翼が広がる。翼影の暗がりで、子推燕は龍井の髪に指を通す。口づけを交わしながら簪を抜かれ、ぱさりと長い髪が子推燕の上に落ちた。
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    PROGRESS宴帰りの龍井が子推ちゃんを抱く話(健全なところまで)部屋に戻るといつものように子推燕が布団に丸まってベッドを温めていた。
     まるで越冬する渡鳥のように、冬になると子推燕は龍井のベッドに巣篭もりするようになる。それは空桑に住まいを移しても変わらない。
     そんな彼を観た空桑の食神代理は彼に専用の部屋を用意すると打診していたが、

    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

     と断っていた。若はそのあたりの機微に聡いので、それだけで子細理解したようだった。
     そもそも若は何も言わずとも龍井の部屋の入り口を広くして、特に窓の大きな部屋を用意してくれている。部屋も他の食魂より幾分か広い。特別扱いだ、と騒ぎ立てた輩も幾人かいたが、彼らが部屋に押しかけてきた折にたまたま広さの理由を示すことになって以降、表立って龍井に不満を漏らす者はいない。
     子推燕の持ち部屋はまさに『小屋』なのだから、足して割ればそう特別扱いというわけでもない。

     龍井は酒宴の余韻の残る正装の裾を捌き、ベッドでこんもりと盛り上がった塊へと近づく。
    「子推さん、帰りましたよ」
     ちら、と端をめくって声を掛ければ、子推燕は中から目だけを出してこちらを見やる。
     金色の双眸をいかにも、今 2675

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     そんな彼を観た空桑の食神代理は彼に専用の部屋を用意すると打診していたが、

    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

     と断っていた。若はそのあたりの機微に聡いので、それだけで子細理解したようだった。
     そもそも若は何も言わずとも龍井の部屋の入り口を広くして、特に窓の大きな部屋を用意してくれている。部屋も他の食魂より幾分か広い。特別扱いだ、と騒ぎ立てた輩も幾人かいたが、彼らが部屋に押しかけてきた折にたまたま広さの理由を示すことになって以降、表立って龍井に不満を漏らす者はいない。
     子推燕の持ち部屋はまさに『小屋』なのだから、足して割ればそう特別扱いというわけでもない。

     龍井は酒宴の余韻の残る正装の裾を捌き、ベッドでこんもりと盛り上がった塊へと近づく。
    「子推さん、帰りましたよ」
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    「龍井さんの部屋が温かいので結構です」

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