エラドの独白 私は、Bugdoll様が好きだ。
それが恋愛なのか、敬愛なのか、はたまた依存なのか崇拝なのかは、もはや分からない。けれど私はそれでも、その名称し難い感情を、あの方へと向けていた。あの方は常に私の光だった。救世主だった。だから、願わくば、ずっと側にいたいと願った。
けれど。
「!Voidoll!」
ある日の帰り道、Bugdoll様が嬉しそうな声を上げる。正面には、白髪ツインテールの少女。Voidollと呼ばれた彼女も、Bugdoll様に優しげに微笑む。
「おや、奇遇ですね。ワタシもご一緒よろしいですか?」
「ああ、構わない。な、エラードール」
「………ええ」
内心に渦巻くどす黒い何かを無理矢理抑えて軽く笑顔を作る。Bugdoll様は…彼女が好きなんだ。時折つっけんどんに振る舞いながらも、彼女にしか見せない表情で話すBugdoll様を見て、そう思う。本当は、ずっと前から気づいていた。それを気づかないふりをしていた。それを認めてしまったら、何かが壊れてしまいそうな気がして、嫌だったから。
…いつか、2人が結ばれる事があったなら、私は2人を上手く祝福できるだろうか。きちんと笑って、「おめでとうございます、お幸せに」とその背中を見届けられるだろうか。……それとも、現実を拒んでしまうだろうか。もし仮にそうなってしまったとしたら、私は私を嫌ってしまうかもしれない。Bugdoll様の幸福を祈れないのなら、隣に立つ資格は無いではないか、と。
「……?エラードール?どうした?」
「…いえ、何でもありませんよ。少々考え事をしていただけですので」
「…そうか」
ふとBugdoll様が私を覗き込み声をかけてくれた。そのお声も、姿も、全てが眩しく映った。だからこそ、私はBugdoll様の幸福を祈らなければならない。そこに私の意志などいらない。私の前を歩く2人に、いつか来たる未来を見据えながら、特別では無いようで特別な時間の中を進んでいった。