トゥーランドットは遙か遠く メロピデ要塞は特殊な場所だ。追放された囚人たちが集う流刑の地でありながら、同時に自治区およびマシナリー生産工場としての側面も持ち合わせている。囚人同士で恋に落ちる者もいれば、水の上に家族を残してきた者、生まれた時から孤独な者と多種多様な人間が入り混じっていて、一種のアングラな集合知とも言えなくなかった。
ずらりと並んだマシナリーを横目に働く囚人の中に時折目を合わせては微笑み合う姿を認め、思わず飛び出しそうになったため息を飲み込んだ。リオセスリの一挙手一投足は囚人たちにとって大きな指標だ。何が公爵様の機嫌を損ね、何が機嫌を良くさせるのか。囚人が仲睦まじくする様子を見て機嫌を損ねただと言いふらされるのも癪だし、ただ自分の思い悩みのために、罪のない恋人たちが機嫌を損ねさせたと勘違いさせるのも些かはばかられる。リオセスリはメロピデ要塞を治め、囚人たちを管理するが、それが横暴によるものではあってはならないのだ。そういった統治の噂は速やかに水の上にまで広がり、ひいてはリオセスリに地位と権力を与えたヌヴィレットへの批判にも繋がるということをフォンテーヌでは誰もが知っている。
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