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    MEAIJM0123

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    MEAIJM0123

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    大学想定、交際済みで同棲してる巻千。
    練習なので口調が曖昧です。

    日付更新前 巻田の夜は早い。言葉通り、夜23時ぐらいにはベッドの中に入ってしまう。というのも、大学で変わらず続けている野球で存分に消費した体力を回復するためだ。
     高校卒業後、それぞれ違う大学に入学し、決まった時間を拘束されなくなったこともあって自由な時間が増えた。
     とはいえ、結局2人して野球が何よりも楽しくて、新しい出会いの中で引き続き球児でいる。
     ただ、変わったのはお互いの帰る家が一緒になってしまったことぐらい。
     告白したのは、こちらからだった。シニアの時の自分にこの事実を伝えたらどういう反応をするだろうか。あり得ないと全身に鳥肌を立てるかもしれない。
     高校時代の終わり、そうあれは。
    「ちはやー」
     豆電球を消した暗闇の中で普段よりずっと静かな巻田の声が響く。それからすぐに背中に人肌が触れる。
     頭の中に浮かんだ高校3年の秋の空が一瞬にして消え去り、目の前にはカレンダーを映したスマホの画面があるだけだった。
     初夏が迫る中で一足先に上下半袖短パンになった巻田の腕から温度が直接伝わってくる。対する自分はまだ七分丈を纏っていて、脚だけはハーフパンツで風通しを良くしていた。その脚にすら巻田は絡みついてきて、お互いの風呂上がりの肌が擦れる。
    「巻田?どうしました」
     夜中に巻田がしがみ付いてくるのは珍しいことではない。とはいえ、最小まで明かりを落としていたスマホを再度見直せば23:40。とっくに夢を見る時間だろうに。
     すっかり寝入っていると思っていたせいで背中を向けていた、ただ、抱き締められているせいでなまじ振り返ることも出来ない。首元に回された腕をぽんぽんと何度かタップすれば、跳ねた巻田の髪が頬にかすめる。
    「ちはや」
     こちらを呼ぶ声が、息が耳に近い。昼の巻田しか知らない人間が聞いたら驚いて腰を抜かすかもしれないほどの静かな声だ。当の自分はもう聞き慣れたものだが。
     とはいえそれを真正面、いや真側面から食らうのであれば溜まったものではない。
     あわてて腕を掴み振りかぶろうとする、が、まるで分っていたとでもいうように巻田からのホールドが強まる。思わず、ぐえ、と情けない声が漏れ出た。
    「なに、なんです?怖い夢でも見ました?」
     すこし間を開けて、巻田の声が響く。
    「してーんだけど」
    「 は、」 
     すこし、いや、だいぶ間を開けて自分の声が出るのが分かった。とはいえその声も情けないを通り越して間抜けなものだった。
     今、巻田が、なんて言った?
     いや、深く考えなくても分かる。良くも悪くもいい長さの付き合いだ。この男の発する言葉に裏なんてないし、思ったことや感じたことをすぐに声に出す人間だと知っている。最近は言葉を考えたり、押し黙ることも覚えたらしいけども。
     とはいえ、今この時間でしたいこと、なんて。
     バクバクと心臓が早く動き始める。
     いや童貞くさいとかそういうのではなく、いや卒業もしてないけれども、むしろそれより先に別のものを卒業したけども。
     口から出てきそうな誰に向けたかもよく分からない言い訳を噛み殺して、数度息を吐く。それから再度巻田の腕をタップした。
    「……明日朝練って言ってませんでしたっけ」
     すぐにウッと小さな声が聞こえた。どうやらその事実は巻田の頭にも入っていたらしい。
     朝練と言っても8時ぐらいに家を出るらしいから高校時代よりはよっぽど時間に余裕があるが、それでも次の日に疲労が残ることはしないほうがいいだろう。
     ……と決めたのは、交際を始めてからすぐの事だった。あの時はお互いにお互いの体をどうこうしたい気持ちがなかったからだろうと今ならわかる。後先考えない清廉な約束だ。
    「……ちょっとならいーだろ」
     分かりやすく逡巡したような間のあと、首の後ろに生温い感覚が触れる。舐められてる。
     巻田の腕に、いや、ここはだめだ。手を離して、奮発して買った良い値段の枕を握りしめる。
     何でこんなに日に!突然!
     頭の中で巻田に対して(いつもどおり)悪態をつく。
     普段はこちらから誘ってばかりなのに。というのも巻田の奴には性欲の「せ」の字ぐらいしかなくて、大概次の日がフリーならバッセンに連れていかれ体力を程よく削り、夜は2人でパーティゲームとか何とかをしてそのまま疲れて眠ってしまいそうなところを、なけなしの恥を棄てて誘っているのだ。
     なのに、何でお前は!そんなあっさりと!次の日朝練って知ってるだろバカ!
     犬が水を舐めるみたいな音が背後から鳴り響く。くすぐったさが徐々にきもちいいものに変わる狭間で、思い切り手を振り上げて手の甲を鼻の頭にぶつけた。
    「ィっでぇ!」
     昼間と変わらない声量で巻田が叫ぶ。静かだった空間に響くそれはひと際うるさくて勝手に額に皴が寄った。
     唾液でべたつく首元を掌で抑えながら上半身を起こす。見下ろせば、巻田が不満気な瞳でこちらを見上げていた。ただその目には、俺が恥を棄てないと見れないレアな感情が乗っかっていて。
     勝手な奴だ、本当に。
    「……週末なら付き合いますから、今日は寝てください。気分じゃないです」
     それだけ言ってベッドから降りる。一瞬シャツを引っ張られたが思い切り足を踏みだせば案外簡単に手は離れていった。
    「どこ行くんだよ」
    「洗ってくるんですよ。べたべたして不快なので」
    「…………けちくせー」
     それだけ言って巻田はめくっていた布団を胸元まで引っ張った。その姿をため息で見送りながら急いで洗面所に向かう。
     濡れた首裏をタオルで拭って、毎週掃除している真っ白な陶器に両手をつく。目の前にある鏡には、なんともまあ、間抜けな表情が映っていた。
     あーほんと、くやしいって顔してる。でもあのまま許したら、俺のほうが我慢できなくなるなんて簡単に想像できた。お互いに体力だけは自信があるし実際保つせいで、はじめてしまえば朝を迎えることも珍しくない。
     なにより毎度毎度誘ってる俺に対して、巻田から誘ってくるっていうるレアな状況だ。いくら俺でも。…………。
    「……はあ。考えたら余計……」
     ぶんぶんと顔を左右に振る。それから、程よい眠気すら完全に吹き飛んでしまった自らの顔に冷水を当てて物理的に頭を冷やした。そうすれば、すこし昂っていた気も落ち着いた。うん、まあ下半身もなんともない形に戻っている。
     寝室に戻れば豪快な寝息が響いていた。どうやら巻田は夢の世界に一足先に滑り込んだらしい。人の気も知らないで、なんて言葉はこういうときに使うんだろう。
     自分が普段眠る側に転がれば、すぐに巻田の腕が首やら腹に巻き付いてくる。さっきよりもずっと淡白な呼吸音が響き渡っていた。幸い綺麗にした首裏を舐められる心配はないらしい。
     画面がオフになっていたスマホを覗き込めば、時刻は23:55。明日は二限からだからゆっくり眠ろう。
     そうだ、週末は巻田がわっと驚くような誘い方でもしてみよう。こんな時間になって俺を驚かせた仕返しをしないと。
     とはいえ、どうせ何を言ったところで何をしたところで、巻田は毎度毎度はじめてやられましたみたいな反応を見せて驚いて、それから嬉しそうに笑うんだから。
    「……ほんと、タイミング悪いですよね」
     寝返りを打つふりをして向き合う形になる。もう今夜は持ち上がることのないだろう瞼に、軽く唇を押し付けた。うーん、と唸る声が響く。
     たまにはサービスでもしますか、なんて考えながら、瞼を伏せた。
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