脱出、そして遭逢「なんとかここまで来れた…」
自分が文字を読むのが好きでよかったと心の底から思う。
広報にハイカラシティの開発が進んでいると書かれていたのを思い出したのだ。
「一人やけど…まあ祝ってもらえないよりかはマシか」
開発が進むハイカラシティの片隅で一人寂しく笑う。
「うち、14歳おめでとう」
時刻は12月2日の0時を回った頃。一人で誕生日を祝っていたその時だった。
「うおっ、おねーちゃんそんなとこで何してんの」
「…誰ですか」
突然話しかけて来たインクリングらしきヒトを思わず睨みつけてしまう。
「わあ警戒心むき出し。アタシはデュアルスイーパー。まあデュアルちゃんとでも呼んでよ」
「…」
「そんな黙り込まなくてもいーじゃん、ほらほら名前教えな」
一つ大きなため息をついてから名乗ることにした。
「…プロモ。今日で14歳。」
今日誕生日なんだ!?と驚くデュアルを他所目にぼーっと空を眺める。
「それにしてもこんなさっむい夜にわざわざ開発途中のハイカラシティ見にくる事ある?誕生日祝い?ていうか親は?」
「家出してん。お父さんが死んでからお母さんがアルコール依存症になって、お姉ちゃんはもう家出て一人暮らししてる。」
「あ〜…そっか、頼れる人がいなかったんだねぇ」
デュアルの優しさに思わず涙が出そうになる。
「初対面やのにこんな話…ごめん」
「いいのいいの。アタシも家出したの。」
「そうなんや…」
プロモはふとここで疑問が出てきた。
このヒトは何歳なんだ、と。
「…ちょっと失礼かもしれんけどさ」
「んー?」
「何歳なん?いやほらうちだけ年齢言ったけどそっち聞いてなかったなーって」
「んー…言ってびっくりしないでよ?」
「分かった」
「14」
「同い年!?」
「まぁそうなるよねぇ」
それで驚かない方がおかしい、とプロモは思った。
明らかに見た目と声が大人のソレだったのに14歳ときたら驚くに決まっている。
「いや、え?」
「いやーそんなに驚かれるとは…驚くというか困惑というかって感じではあるけど」