トライデント・カラー SIDE:理鶯
カツ、カツ、と革靴がコンクリートを叩く。
湿気に満ちてじっとりとした肌触りが不快で、所々朽ち果てた廊下の行く手には原型を留めない鼠の死骸。壁面を太ったゴキブリが這い回り、コンクリートを覆う蔦や野草が文明を侵食しかけている。
結束バンドで後ろ手に両腕を拘束されたまま、理鶯は静かに辺りを見渡した。己を囲むようにして歩く男の数は、全部で六人。武器やマイクは取り上げられてしまったが、両腕の拘束さえ解ければ制圧できない人数ではない。唯一、この場での障壁があるとすれば。
「変なこと考えるなよ?」
目の前を歩くこの黒髪の男だけは、他の有象無象とは明らかに身のこなしが違う。軍人あがりか、格闘技を噛んでいるのか。
12145