都会の雨 ひょんなきっかけで、少し話をすることになった日比谷と大江戸。場所は分かりやすいように、と乗換駅である六本木駅にしたのだが、先に日比谷のほうが大江戸のほうに下りてきていた。駅の外では一日中雨がしとしと降り続けていて、今も地上を濡らしている。
「日比谷さん、すみません。私が向かうことも可能だったのですが」
「ううん、平気。久しぶりに、大江戸の最深付近に来てみたかったんだよね」
利用客は既におらず、歩く音も響く程の時間帯だ。適当に見つけた椅子に座り、早速話を始めた。
「最近ね、実感してることがあるんだ」
「何でしょう」
「都会の雨と田舎の雨って、感じ方が全然違うなって」
「なるほど。都会と田舎で、ですか」
大江戸は納得できそうな所を頭の中で探しながらも、日比谷へ尋ねた。
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