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    slekiss

    @slekiss

    悠久8割とQMA2割。
    腐は2主ルー、アル1主、アレ1主、ぜふぁるし、セリレオ。かけないけどリクハルも好き。
    デジタル環境ないので最近の絵は100%アナログ。文字も書く。
    只今キャラ誕絵継続中(3月までの予定
    過去絵(主に描きかけて飽きたやつ)や小説ともいえないレベルの文章を投げることも。

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    slekiss

    ☆quiet follow

    ウン十年前に2主(シオンさん)の過去話を書こう!と意気込んだはいいが途中で力尽きたもの。聞き間違いでショーン=シオンだった、というのは覚えてるが、過去の自分がこの後どう続けるつもりだったのか不明なためここで供養する。


    2主:シオン・N・エルフィールド。淡い亜麻色の髪と薄い鳶色の瞳を持つ、全体的に色素の薄い青年。
    謎の女:見た目は深層の令嬢。自警団員のショーンという人物を探しているようだが……?

    #悠久幻想曲
    longFantasia

    邂逅(仮 それは、本当に偶然の出来事だった。

     その日の夕方、アルベルト・コーレインは、自警団事務所前で一人の女と出会った。
     きっちりと結い上げられた漆黒の髪に、白い帽子とひと繋ぎになったヴェールを載せ、細い身体を帽子と同色のドレスで包んだ、何処から見ても深窓の令嬢然とした姿。
     品のある落ち着いた雰囲気から察するに、年は妹のクレアより少し上ぐらいだろうか。
    「あの……少々お尋ねいたしますが」
     鈴を転がすような、とはこのことをいうのだろう。涼やかな美声にはっと我に返る。
    「は、はい?」
     正直顔の造作だけで言えば、彼女とアリサは全く似ていない。
     けれど、ふわりと微笑む儚げな美貌と、それでいて意志の強さを感じさせる慈愛に満ちた薄茶色の瞳が、アルベルトにアリサを思い出させた。
    「自警団事務所はどちらかしら?」
    「あ、じ、じゅむしょ……じゃない、事務所なら、こ、こちらです」
     そのせいか、受け答えまでアリサに対するそれのように、緊張したものになってしまう。
     挙句、何でもない言葉を噛んだばかりか、変にどもってしまった。
     女は、そんなアルベルトの態度に気を悪くするふうもなく、かといって馬鹿にするでもなく、ただ「まあ」と小さく呟いた。
    「わたくしったら、ろくに見もしないで……恥ずかしいわ」
     そう言ってほんのり頬を染める。
     アリサとはまた違う淑やかさに、不覚にもどきりとした。
    「そ、そういえば、自警団に何の御用ですか?」
     自分は自警団員です、と自己紹介すると、女は瞳をまるくして再び「まあ」と呟いた。
    「そうでしたの……それでしたら貴方、ショーンという人をご存知かしら?」
    「ショーン?」
     アルベルトは首をひねった。自警団に入団して何年にもなるが、ショーンという名に聞き覚えはない。
     そのことを告げると、彼女は意外そうな顔をした。
    「おかしいわ……彼は確かにこちらで……」
    「失礼ですが、何かの間違いでは?」
     アルベルトの言葉に、女は間違いないのだとかぶりを振った。
     そして、思い出したように顔を上げた。
    「そうですわ。ノイマン様を呼んでください!」
    「の、ノイマン!?」
     ノイマンって、自警団第三部隊の隊長だった、あのノイマン隊長?
     アルベルトの質問に、女はそうですわと瞳を輝かせた。
    「彼は……ショーンは、自警団員のノイマンという方に世話になっていると言っていました。ですから」
     ノイマンを呼んでくれれば判る。彼女はそう言ってアルベルトに詰め寄った。
    「で、ですがノイマン隊長は……」
     亡くなっているんです、と言おうとしたとき、後ろから声がした。

    「あれー、アルベルトさんどうしたのー?」
     溌剌そのものといった声の主。自警団第一部隊隊長のひとり娘、トリーシャは、アルベルトの隣に居る女を目にすると、途端に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
    「やだー、アルベルトさんったら。隅に置けないんだからー」
     アリサおばさま一筋だと思ってたのにー。などとのたまいながら、アルベルトを肘で小突く。
    「ちょ、ト、トリーシャちゃん。違うよ。そんなんじゃないって」
     言われた意味を一瞬掴み損ねたアルベルトだったが、やがて顔を赤らめながら必死で彼女の暴走を止めようと試みる。
    「まったまたー、しらばっくれてもダメなんだからー」
    「だから本当に違うんだって。この人は人探しを……」
     ひとり事情が飲み込めず呆然と立ち尽くす女を尻目に、アルベルトとトリーシャの漫才もどきが始まる。

     暫くそうして言い合っていたが、そのうちアルベルトと女に恋愛感情のたぐいがない事に気付くと、トリーシャは「つまんない」と会話を放棄して、自宅へ帰ってしまった。
     トリーシャの相手でほとほと疲れ果てたアルベルトが、それでも女にノイマン隊長のことを話して聞かせたのは、ひとえに自警団員としての使命感によるものだろう。
     ノイマンの死を聞かされ、女はふらりとよろめきかけたが、何とかそれを踏みとどまる。
     しかし、頼みの綱であるノイマンが亡くなっていたことで、ショーンという人物の手掛かりはぷっつりと途切れてしまった。
    「もう一度お伺いしますが、本当にショーンという方に心当たりはございませんの?」
     それでも、諦め切れずに女は尚も食い下がる。
    「え、ええ。少なくとも俺が入団してからは」
     アルベルトが自警団に入団したのは、今から数年前。
     以降、そのような名前の人物が入団したという話は聞かない。
     だが、それ以前なら自分には知りようもないことなので、その人物が入団した年によっては、可能性がないこともないのだが。
     それを女に告げると、彼がノイマンに世話になり始めたのは、8年ほど前だという。
    「彼はノイマン様に引き取られ、息子同然にかわいがって戴いたとか」
    「なるほど、息子同然にねえ……」
     こころもち上向き加減に宙を見つめ、女は『彼』についての記憶を引き出そうとする。
    「養子の話も出ていたそうですが、彼はそれを断ったとか」
    「養子……?」
     そういえば昔、そんな噂を聞いた気がする。
     あれはいつだったか……。
    「そのかわり、孤児だった自分をここまで育ててくれたノイマン様に親愛と感謝の気持ちをこめて、お名前の一文字を頂戴したと」
    「……孤児で、名前の一文字をもらった……?」
     なんだか、何処かで聞いたような話だ。
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