見てはいけないもの今日はこの後も撮影があるから忙しくなりそう。
1時間のんびり休憩しようとUNDEAD専用の休憩室へ行くと、扉の向こうから晃牙くんが騒いでる声がした。
また喧嘩でもしているのかなと聞き耳を立てると、もりっちが熱を出したと騒いでいる。
もりっちと零くんは今同棲しているから同居人、まあ恋人が風邪だと心配になるのだろう。
面倒ごとじゃなさそうだし休憩室に入ることにした。
「おお、薫くん!良いところに来てくれたのぉ!」
「はいはい、もりっちが風邪ひいたんでしょ?」
「そうなんじゃよ!!それで我輩明日も仕事じゃから休むーと言ったら千秋ちゃんから怒られたんじゃ。」
「そりゃー怒るでしょ。」
もりっちは人のことになると無理して仕事を早く片付けてお見舞いに行ったりしてるし、実際私の時も忙しいのに来てくれた。
でも自分の体調が悪い時は慣れてるので大丈夫だーってお見舞い行くの断られるんだよなー。
もりっちの気持ちもわかるけどね。
自分のためにわざわざ…って考えると申し訳なくなるんだろう。
今回は諦めて大人しく仕事しなさいと言おうとしたら衝撃の言葉が零くんの口からでた。
「さっきから晃牙にレオンくんの状況がわかるカメラを寝室に設置すれば良いのではないかと提案したんじゃが、ダメだって言うんじゃよ…。」
「だ、か、ら!そんな気持ち悪りぃことしたら守沢センパイも流石に引くぞ!」
「うん、それは気持ち悪い。もりっちが可哀想。気持ち悪い、本当に。」
私と晃牙くんから罵倒されて悲しくなったのか、おーいおいおいと泣いている。
そこにアドニスちゃんが入ってきた。
「ど、どうしたんだ!?朔間先輩」
「アドニスくん、聞いておくれ…かくかくしかじかで」
「…??」
かくかくしかじかって言われてもわからないでしょ。と代わりに説明してあげると、守沢先輩が心配なことはわかったが、カメラを置かれると流石に怖いと思う。と言った。
流石はアドニスちゃんと思いながら零くんの反応を待っていると、突然俯き出した。
「もし千秋ちゃんが高熱で倒れて苦しんでおったらどうするんじゃ…。我輩気が気でないぞい。本気で…心配なんじゃ。」
もりっちと零くんは表にはあまりバレないように高校2、3年?…忘れたけどその辺りから付き合っているらしい。たしかね。
付き合ってる歴としては今は20歳なのでそこそこだろう。そんな付き合いの中でもりっちは体が弱いみたいだから何度も倒れたりしているところをそばで見てきたんだと思う。
過剰に心配するのもわかるけどね。
「はぁ…お昼の2時くらいまでなら私がもりっちの看病できるから、午後は他の人に頼むので良いんじゃない?」
「いいのかえ?」
「まぁ前にもりっちに看病してもらったし。私も心配だから。」
ありがとうとさっきとは打って変わって元気になった。そんなこんなで午後は元々同室だったアドニスちゃんにお願いして看病してくれることになった。
☆。.:*・゜
次の日
「で、なんで私もついていかなきゃ行かないわけぇ?」
「え?だってもりっちが体調悪いって言ったらちゃんと栄養取れてるのぉ〜とかもりっちしんぱーいって言ってたじゃん。」
「そんなかおちゃんみたいな言い方してないんだかけどぉ!?」
まあまあと落ち着かせてもりっちの住んでいるマンションへと向かう。
その途中で零くんからメールが届いた。
零くんがもりっちに対して超絶過保護すぎるのか、飲ませる薬やいつも風邪の時に食べている食べ物のレシピをぶれっぶれの写真で送ってきていた。
それを見ながら材料を買おうとしたがもう家にあると言う。
過保護通り越してこれ束縛…いや変質者じゃんと思ったが本人に言っても無駄だろう。
そんなこんなでマンションへと辿り着いた。
マンションの入り口のインターホンを押すと、零くんが鍵を開けてくれて中へ入る。
部屋の前までくると、丁度零くんがドアを開けた。
「二人ともすまんのぉ。千秋ちゃんをよろしく頼むぞい。」
「まかせて。それより仕事は?」
「今絶賛遅刻しそうなんじゃ。」
「はぁ!?ちんたらしてないで早く行かなよねぇ!」
せなっちに叱られて頼んだぞい!と急いで仕事へ行った。
お邪魔しますと中へ入り、とりあえず荷物をリビングに置く。
そう言えばもりっちが寝室で寝てるってわかったけど、どこが寝室なんだろう。
もりっちの個人部屋には入ったことあるけどあとは入ったことないしわからない。
一つずつ入るしかないかともりっちの個人部屋の隣の部屋を開けると、壁にもりっちのポスターや棺桶のベットにもりっちの抱き枕とぬいぐるみが飾ってあった。
怖すぎ。見なかったことにしようとドアを閉じ、他の部屋を見ようとすると、せなっちがここが寝室だよぉ〜と教えてくれた。
中を覗くと苦しそうにはしているけど寝ているもりっちがいた。
起こさないように扉を閉めてお昼ご飯の用意をすることにした。
せなっちの手際が良くてすぐに料理は完成した。
時刻は11時。
朝の6時過ぎに一回薬を飲んだらしいのでもう少し後にお昼ご飯にしようとした。
一旦様子を見るため寝室のドアを開けると、うぅと唸り声が聞こえてきた。
どうやら起きたらしい。
「もりっちおはよ。」
「はか…けほっ…すまん。」
「あんた、昨日より悪化してるんだって?とりあえず今汗拭いてあげるから水分補給しな?」
そう言ってせなっちは緑茶をもりっちにあげた。
せなっちがタオルと水を用意している間に私はもりっちと少し話すことにした。
「すまん…」
「あぁ、無理に喋らなくていいよ。それより楽な体制になろ?」
コクンと頷いてもりっちは横になった。
その時急に私の携帯から着信音が鳴り出した。
突然のことでびっくりしてごめんねと言いながら画面を見ると零くんからだった。
電話に出ると千秋ちゃんの様子はどうじゃ?とのこと。
これは休憩中にまた電話がくるパターンだと思い大丈夫とだけ答えて電話を切った。
もりっちがこちらを向いて何か聞き出そうにしていた。
もしかして誰からって聞きたい?と言うと頷いた。
零くんからでもりっちは大丈夫かーって。
そう答えると困った顔をした。
せなっちが部屋に入ると、機嫌悪そうに話してくる。
「朔間から守沢が大丈夫かーってメールと電話が来たんだけど。文もちーちゃ、だいじーぶかえ?って変な感じだし。あんた本当にあんな奴で大丈夫なの?」
「申し訳ないけど私も思う。零くんに何か嫌なことされてない?」
首を振ると勢いが強すぎたせいでクラクラと倒れそうになる。
二人で支えてあげて、とりあえず汗を拭いてあげてご飯を食べさせた。
その後は薬を飲んでありがとうと言って眠りにつく。
とりあえずリビングにいて定期的に様子を見ることにした。
その間せなっちと少しもりっちと零くんについて話していた。
「ねぇ、正直本気で守沢のこと心配なんだけど。風邪も心配だけどそれ以上に朔間とのことについて。」
「んー、お互い好きって言うはわかるんだけど零くんの方がすごい…束縛凄そう。」
「あいつは頑張り屋だから心配するのはわかるんだけどね。」
「でもわんちゃんとかのペット用のカメラ設置しようとか言い出した時流石にげろげろーってなったよね。」
「はぁ?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「報連相!!」
なんで伝えてないのってせなっちにほっぺをつねられた。
とりあえず何かあったら仕方なく助けてあげようと決めた。
そろそろ様子を見ようと寝室に入った途端せなっちがいきなり怖いことを小声で言い出した。
「ねぇ、もしこの部屋にカメラか盗聴器が設置されてたらどうする?」
「っ…!!ねぇぇぇえ!怖いこと言わないでよ!」
「探してみる?」
「やだよぉぉ!!」
ものは試しと寝ているもりっちを起こさないようにせなっちが周りの棚を漁り始める。
変なの出てきたらどうするのー!と思いながらせなっちの後ろをついていく。
盗聴器はここら辺に仕掛けるとバレにくいよと説明しながら漁っていく。
なんで知ってるんだろう、怖いんだけど。
しばらく漁って、絶対漁ってはいけなさそうなベットのサイドテーブルの棚の前まで来てしまった。
「ねぇ、ここはかおちゃんが開けてよ。こういうの得意でしょ?」
「やだよ!!絶対嫌!!っていうか得意じゃない!!」
「はぁ、じゃあ安全そうな一番下から開けるからねぇ。」
ぜっったい変なのあるとせなっちに抱きつきながら薄目で見ると、中には零くんのぬいぐるみと何故か分厚い手錠があった。
あ…これ絶対危ないやつ。
そっと閉めてやっぱりもうやめようと思ってると、突然チャイムの音が鳴り響いてせなっちと叫びそうな声を抑えながら、二人して抱きついて腰を抜かした。
「な、なななんなのぉ!?」
「ねぇー!もぉ私達おしまいだぁぁ」
二人で震えているともう一度チャイムが鳴った後、誰かの携帯から着信音が聞こえてきた。
床に這いつくばりながら涙目で携帯をとると、アドニスちゃんからだった。
「も、もしもし…?」
『もしもし、羽風先輩?声が震えているぞ』
「ちょっと…ね。」
『今守沢先輩のマンションに大神と来ているのだが。』
「あ、もうそんな時間なんだ!今開けるね」
アドニスちゃんの優しい声を聞いて安心したのか歩けるようになっていた。せなっちはもう私帰ると言って一緒に帰る準備をした。
アドニスちゃんと晃牙くんにもりっちを託した後、私達は重い足取りで歩いていた。
「かおちゃん。なんでかわかんないけど私本気で守沢のこと心配になったんだけど。」
「私も。なんでかわからないけど警察を呼ぶ準備だけはもりっちと会う時常にしようと思ったよ。」
そう言って硬い握手をかわした。
☆。.:*・゜
「羽風、瀬名!この間は看病してくれてありがとう⭐︎」
私とせなっちはあの一件があったせいで、何故かわからないけど何も言わずにもりっちのことを抱きしめた。
「なんだなんだ!急に抱きしめられると照れるのだが…。」
「そうじゃよ、我輩の千秋ちゃんを抱きしめるなんて。」
「「出た、変質者!!」」
「はて?」
「守沢、今から暇だよねぇ?私とかおちゃんと守沢の3人だけで!ご飯行こう。」
「そう!行こっ!!」
さっさとこの場から離れようとすると待つんじゃと回り込まれた。
「この間はありがとう。ところで二人に聞きたいことがあるんじゃが。」
「なぁに?手短に言ったよねぇ。」
「ベットサイド…と言えばわかるかのぉ?」
やばいやばい、そう言えばあの後ちゃんとしめたか確認してなかった!これ絶対刺されるよね!?
もりっち助けてーと思いながら抱きしめる力を強める。
いててててと言いながらもりっちは何が起こっているのかわからない表情でこちらを見てきた。
「何もみてないのかえ?」
「えええ、わっかんないなー!!ね、せなっち!」
「し、知ってるわけないでしょぉ!!ほら、いくよ!」
逃げるように立ち去った後ご飯屋さんに入る。
もりっちが二人とも顔面蒼白だぞ!風邪がうつってしまったのか?と心配された。
言うか言わないか迷ったけど二人の意見は同じ。
『いや、このまま刺されたくないよね。』
今までもりっちにいろいろ助けられたけどこればかりはごめんねと思いながら、正直に見たことを話す。すると顔を真っ赤にしながら一旦電話してくる!と外へ出ていった。
せなっちと震わせた手で硬い握手をかわした。
もりっちに、ありがとう。
零くんに、さようなら。
そして全てのもりっちファンに
おめでとう。