茉莉花の香りに誘われて。「ほら薫、見て?本当に可愛らしいわねぇ。この方が千秋お嬢様よ。」
奥様の腕に抱かれた小さな天使は、そっと伸ばした俺の指をその小さな椛のような手でキュッと握ってくれた。彼女、守沢財閥のご令嬢守沢千秋様と初めてお会いしたのは俺が10歳の時だった。守沢家は世界的にも有名な警備会社で、防犯グッツも開発しておりそのシェアは業界一を誇っている。そんな守沢家に代々使えているのが羽風家だ。俺の両親も兄も姉も守沢家で執事やメイドとして働いている。そして俺は千秋お嬢様の世話役を仰せつかっている。将来執事になる事を強制されていた訳ではないが、千秋お嬢様に初めて会ったあの日から俺の心は決まっていた。
あれから早くも十年の月日がたち、千秋お嬢様は小学校四年生になられ、俺は二十歳を迎えていた。そして最近の俺の悩みは.......
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