それってつまり… 相談所のドアを開けて中に入ると、応接ソファで兄が所長の顔を黙って見ていた。なんだか目つきが厳しくて、僕が声をかけるのをためらっていたら、兄は表情を少し緩めて僕の方をチラッと見てくれた。
「律が来ましたよ。続けますか?」
「関係ないだろ、これはお前のためなんだから」
「…らしくないですね、いつももっと余裕そうなのに」
「人間には色んな側面がある。相手のことを簡単にわかった気になるな」
え? 喧嘩? 兄さんが霊幻を相手に?
「…なんでいつもそうやって人を遠ざけるのかな」
「なりふり構ってられないんだよ、大人のメンツってのがあるんだから」
「………楽な方に逃げてるだけなんじゃないですか?」
「勘弁しろよ、社会で生き抜くってのはそれだけで大仕事なんだぞ?」
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