ワンライ(ゴール/駄菓子) 病院の中庭から個室病棟へと、叱られない程度の急ぎ足で歩く。
昼過ぎに行く、と予め告げていた時間はとうに過ぎている。今頃、相棒は舌を……いや、首を長くして待っているはずだった。
昨日は、誕生日の祝いという名目で退行催眠ごっこに付き合わされた。今日はまだ、タブレットにメールは届いていない。眠ってゆっくりと休息してくれていると良いのだが。
主の命を奪った時に、一度は終わったと思った人生。終わりの見えない泥沼から救ってくれた、無二の相手。
その男は先日、危うく故郷で命を落としかけた。ギリギリのところで救出に成功し、今は第三国の病院で大怪我を治療している最中だ。
世界征服という夢に向かって邁進している男がひととき余所見した理由は、抑えきれなかった衝動により反故にしてしまった自分との約束をもう一度結ぶため。
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