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    hujino_05

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    hujino_05

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    ※夏が離反回避して教師やってるifにおける伏→五/夏と五のブロマンス要素?あります

    その男の考えていること そうだ、あの人にとっての特別が誰かなんて、そんなの分かり切ってる。俺じゃない。俺じゃなれないんだ。そういうむなしさが溜まりに溜まって、ついに、溢れたらしかった。
    「…どうせ貴方には敵わないので」
     口にしてからしまった、と思った。言われた相手―黒い髪をハーフアップにしおろした毛先をはねさせている大柄な男、つまり夏油傑先生は、きょとりとまばたきをした。純粋な驚きばかり浮かんでいるその顔に別の感情が乗る前に言い訳をしたくて、だが何も思い浮かばず、とりあえずと「ちがうんです、先生」ともごもご言ったあたりで、第三者の声が廊下に響く。俺はぎょっとした。今、一番聞きたくない声だったからだ。
    「恵」
     シン、と冷えた声が、それでもよく聞き覚えのある人の声だと、いやでも分かった。子供のころ、たくさん聞いた声だから。高専に入った今でも、めぐみ、めぐみ、としょっちゅう呼んでくる声だから。それと、俺が欲しくてたまらないけど、俺のものにはならない声だから。
    「それ、どういう意味?」
     口調はまだいつものまま、と言える範疇だ。だから、本気でキレているわけではない。今まで経験した中で一番キレていた時は、夏油先生に「昔の喋り方」と表現されるヤンキーそのもののオラついた喋り方をしていたので、今日は、そこまでではないということだ。怒っていることに変わりはないが。
     頭は回るし思考もできるが、指先は冷えて口はなにも言えなかった。ぐるぐると回るだけで出口もなければ言葉になりもしないものを、ただぼんやりと眺めているような気分。一方で、体は恐怖と混乱を感じていて、ついには冷や汗さえでてくるほどだ。思わずツバを飲み込んだ俺は、視界を遮るように滑り込んできたものがなんなのか、とっさには分からなかった。
    「悟」
     俺を背中に隠すように腕を広げて立っていたのは夏油先生だった。五条先生の冷えた目が見えなくなるだけでいくらかマシになり、俺はつめていた息を吐きだすことができた。
     五条先生の、夏油先生にだけ向ける雑な声色が雑なことを言う。夏油先生はそれに雑に返事して、それで五条先生の機嫌は直る。他の人が同じようなことをすれば氷点下の視線か舌打ちか力加減した拳が飛ぶだろう言動を、彼らはお互いに許す。そういう、他の者が踏み込めもしない、特別な関係なのだ。
    「伏黒くん」
     いつの間にか五条先生は去っていて、夏油先生がひとり、俺の顔を覗き込むようにしゃがんでいた。俺は慌てて顔を上げ、「すみませんでした」とすぐに頭を下げる。自分の靴を見たままの俺に、夏油先生は苦笑したようだった。
    「気にしないで、悟は君に期待しているんだよ。ただやりすぎだよねぇ、 ちょっと弱音吐いたからってあんな反応しなくてもいいよね」
    「…はい」
     急にしん、と静かになった。夏油先生が笑うのも、しゃべるのもやめたからだ。喉がひりつく感覚がする。
    「…恵くんはさ、」
     切れ長の黒い瞳がこちらを見ている。俺はそこに浮かぶ感情を、いつも、うまく読み取れない。

    ーーー

     少年の瞳が黒々とゆらぐ。不安定。何かを覆うとして失敗したなごりが見える。何だ?何を隠そうとした?瞬きの間に消えようとするソレを覗き込み、気が付く。熱い、どろりとした、執着と欲の混じったモノ。ああ、そうか、そうなのか。キミはー。

     悟のことが好きなんだね!

     そっかそっかぁ。うんそうかこの間まであんな小さかった伏黒くんがねぇ。でもそうだよねキミももう高校生で、立派に恋も欲も知っている。愛だって理解しているかもしれない。その上で悟を選んだんだものね。あの傲慢で自由なんて言葉では表現しきれない奔放すぎるデリカシーのない頭の中いつまでもガキの男を…。いやぁしみじみしちゃうな~。伏黒くんの成長と、悟みたいな人間にもまっとうに恋してまっすぐ側にいようとする子がいてくれるんだ! という感動と。ウンウンすばらしきかな青春。……アッ待ってくれ私てっきり自分のこと親戚の子供の成長を見守るオジサン気分でいたけど彼の言動的に恋敵ポジに置かれてるんじゃないか待って本当にそれは待ってくれ伏黒くん私はね悟みたいな暴君に恋なんてしてないし恋愛だってしてないよそりゃあ私たち親友をこじらせてるから物理的距離も精神的距離も近いのは分かってるしお互いがいないとブレーキのないレーシングマシーン化するとこあるし逆にお互いがいることでアクセルしかないブルドーザーになることもあるけどとにかく誓って恋敵などではないからね。そのあたりを事細かく説明しようとしたあたりで気が付く。悟。いる。なんで。タイミング悪。っていうか圧強。なに怒ってんの。キミ任務だって言ってたじゃん。なにその紙袋。え? 伏黒くんにあげようと思って? 任務先でおいしいと評判のジンジャークッキーが売ってて? つい? アラアラヤダ~! 伏黒くん聞いたぁ? 悟ってば普段自分用の甘味しか買わないくせしてさぁ。こういうとこあるよね~。ねっ…………あっ…聞こえてない…? お~い伏黒く~ん。ふし……大丈夫? 生きてる、彼? あっ生きてる。そう…。こんなに落ち込ませてどうするんだよ、君のせいだぞ。かわいそうに。キミもねぇ、伏黒くんに期待してるのは分かるけど、つぶす勢いなのはどうにかしなよ。別に伏黒くんを傷つけたかった訳じゃないだろ。あっしょげてる。おもしろ。言っとくけど、そうやって勝手に怒って勝手に傷つけて勝手にしょげるの、君の相当悪いとこだからな。いい歳なんだから直しな。え、何? ああはいはい、フォローはしとくけど、ちゃんと後で謝りなよ。
     はぁ……。アッ待って悟帰しちゃったけどこれややこしい状態のままだよねどうしようどうすればいい? いや悟がいたところで解決しそうにもないのがまた問題なんだけどううんそうだなとりあえず恵くんは悪くないからねッ。悟が悪いです。はい。アイツのせい。それで…ああ…なんて言えばいいのかな…。私けっこう生徒に対してはかっこつけたいタイプだし、ここで言う一言ってだいじだよね。そうだなぁ、恵くん…。「恵くんはさ…」
    「君はアクセルになりたいのかい? 私は君は悟のブレーキだと思ってるし、ブレーキになれるのは君だけだと思うけど…私はブレーキにはなれないからなぁ」
    「はい?」
    「あっゴメン間違えた」
     うわっはずかしっ。考えすぎて意味わからないこと言ってしまったよヤダヤダ忘れてくれ。学食一年分ぐらいおごるから。
     …いやでも、私が言いたいことはそこなんだよなぁ。確かに私しか悟のアクセルになれないかもしれないけど、私が思うに、悟のブレーキになれるのは恵くんだけだと思うんだよなぁ。車ってアクセルもブレーキも必要だし、悟にとっての君は、君が思ってるよりもずっと、かなり大事なものだと思うのだけど。
    「えっと。とにかく私は君と悟の仲を応援するよ!」
    考え抜いた結果、それだけ出てきた言葉を聞いた瞬間、恵くんの瞳がすんっと死んでしまったのを見て、私は失敗に失敗を重ねたことを察した。
    「…わかりました。いつか絶対夏油先生を超えてみせるので、待っててくださいね」
     アレッ? そういう方向?
     うーん。親戚の子供の成長を見守るオジサンポジションに納まるのって、むずかしいね。
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    hujino_05

    DOODLE七と五が食べてるだけの七五未満はなし
    たべるときは その日、七海は名前以外は何も知らぬ街にいた。出張である。さっさと任務を終えたはいいが、迎えの車がくるまで時間もある上、昼すぎという時間を一度確認してしまうと腹が減ってしかたがない。とにもかくにも腹を満たさなくては。七海は店を探しに街をうろつきだした。
     今日の任務はそこまで激しいものではなかった。スーツもほとんど汚れていないし、ジャケットとスラックスを軽くはたけば眉間の皺の深さとネクタイの派手な柄以外に気になることはないサラリーマンのできあがりである。ただし、生まれつきの鮮やかな金髪やサングラス越しの瞳の色などは目立つとも言え、時折うっとりとした視線や感嘆の吐息がもれることもあるが、七海はそういったものに一切気がついていなかった。なにせ今の七海とって重要なのは昼食である。はらがへっているのである。人々の視線を切るように大股で歩き、人々の吐息をものともせず視線をめぐらせていると、ふと、大通りに面したビルの一階に入っている店が目に入った。目立つ場所にあるわりに看板はちいさくひかえめで、外観はむき出しのコンクリートに細長い板が数枚はられている、シンプルでありながらこだわりが見えるものだ。大きな窓ガラスから見える店内はあたたかい明かりと立派な木目のテーブルが目立ち、奥に見えるカウンターを見るあたり、コーヒーがメインのカフェであることが分かる。カウンターの背面の壁にそなえつけられた板を渡しただけの棚にびっしりと置かれたコーヒー豆を眺め、ここにしよう、と七海は思った。
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    hujino_05

    DONE前載せたものの一応完成版/猫に狂う人々と戸惑う五と猫/五の最強感がまったくない
    ノワール ソレにいちばん最初に気がついたのは虎杖悠仁であった。彼のズバぬけた身体能力のひとつである動体視力は、木々や草むらの間を走りぬけるモフモフしたナニカを捉えたのだ。シルエットや尾の長さかたちからして、おそらく猫か、ばあいによってはタヌキではないかと思われた。しかし警戒心が強いのか虎杖以外の視界にはかすりもしないモフモフは、ながいこと、虎杖の気のせいか見間違いということで片づけられていた。なにせ此処は呪術高専。結界も貼られている上、おどろおどろしい呪具も呪物も呪いそのものも山ほどある空間で、基本的に野生動物は寄り付かないらしいのだ。野生動物は呪力を感じ取り逃げるものらしい、と言ったのは誰だったか、虎杖は記憶を探りながらも「でもやっぱ気のせいじゃないと思うんだよなぁ」とくだをまいては、釘崎と伏黒に「疲れてんのよモフモフと癒しが足りないんでしょ。ホラ、脱兎だしてやりなさいよ」「そういう用途じゃないんだが…」と言われながら脱兎を出してもらったりしていた。ちいさくて目がくりくりしていて耳の長いモフモフがかわいいので、虎杖はわりとすぐに自分しか見かけないモフモフのことを忘れたが、そういう時に限ってすぐに視界の端にモフモフが入り込んでくるので「やっぱ気のせいじゃない!」となるものだから、この話は結末を迎えず永遠同じところをぐるぐると回っていた。
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    hujino_05

    DOODLEコンビニ店員伏×リーマン五(未満)小話
     伏黒恵はコンビニでバイトをしている。
     理由は一人暮らしをしているアパートから近かったからである。それ以外の理由などない。伏黒は愛嬌があるタイプではないが、(昔はヤンチャもしたが)どちらかと言えば真面目な方である。遅刻もせずにきっちり働き、品出しを任せれば美しく棚が整える。レジではすこし不愛想に見える時もあるが、稀に浮かべるほほえみが一部の客にウケて人気にすらなっているし、たいていの客も伏黒の顔に笑顔が浮かんでいないことよりも、手際がよく礼儀正しいところを評価した。そうやって、伏黒はそのコンビニに、好意的に受け入れられていった。
     その日の伏黒は、先輩の代わりとして初めて夜勤に入っていた。日付が変わった直後のそのコンビニには、客はめったにこない。品出しや掃除、賞味期限のチェックも終わり、発注に関してももう一人のバイトが率先して行ってくれたおかげで、すっかり仕事は終わっていた。ホワイト思考な店長のおかげでワンオペは無く、必ず二人はいるのがこの店舗の良いところではあるが、今に限って言えば「良い」と言い切れないところがあった。つまりは暇だった。伏黒恵は暇をしているのである。暇すぎて、もうひとりのバイトとの会話も早々に下火になり、互いに黙っているのも気まずくなり、ふらふらと用もなくレジに立ちに出て来てしまったぐらいには暇だった。バックヤードでは上着をきていたが、空調の効いた店内ではすこし暑い。上着をバックヤードの入り口脇に畳んで置き、意味もなく店内を眺める。そんな時だった。入口に人影が見え、入店のメロディが聞こえてきたのは。
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