優しい弟 何日か前から表玄関の蛍光灯が切れかかっていることが気になっていた。ぱつ…ぱつ…と音を立てて弱々しい明かりを灯すそれはもはや風前の灯火だった。
内玄関ならまだしも檀家さんが訪れたときにお通しする表玄関では、そのままというわけにはいかない。文句を言う人間が現れる前にさっさと片付けてしまおうと脚立を引っ張り出してやり始めたのが運の尽き。
私は脚立から落ちた。
蛍光灯の電球自体は無事に取り替えられたのだが、作業を終えてほっと一息ついた瞬間に足を踏み外してそのまま脚立ごとひっくり返ってしまった。けたたましい音を聞きつけた弟が二階から駆け下りてくる。また私が何かやらかしたのだと決めつけているので顔が怖い。
「何を…やっているんだ?」
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