その子供は、生まれ落ちたその時から忌み嫌わていた。
呪いの黒百合。恐ろしい悪魔。一族の者は皆そう言って、その子供と両親を森の奥の館へと閉じ込めた。
両親は嘆き悲しんだものの、その子を憎むことはなかった。愛しい我が子を、憎めようがなかった。
二人はその子供を類と名付け、深く愛そうと誓った。
たとえいつか自分たちが、愛した子に殺されようとも。
***
「では、本日はこれで……失礼いたします」
俯きがちな女は、類の返事を待つことなく小さな礼をして部屋を出ていった。いつものことだ、と類は気に留めることもなく、大きく息を吐いた。
「はあ……これでまた、来月か」
月に一度、食料や衣類、その他生活に必要なものが運び込まれるこの日に、いつまでたっても慣れない。おまけに相手はひと時だって類の傍にいたくない、というのを隠そうともしないのだから、尚のこと居心地が悪かった。
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