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    あけの

    パンの耳→原稿からけずったとこ

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    あけの

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    零晃で書いた画家×モデルパロのときの一部。 創作はつねに、声援と義務とのはざまにあるなあ……みたいなことを書きたかったところ(キャラを代弁に使うな)

    天使の住むアトリエ 画家に限らず、あらゆる分野の芸術家の大半は他人に口出しされることを嫌う。自分のやり方で、自分の審美眼にかなうものを、自分の納得のいくまで求め続ける。そういうタイプの芸術家はかなり多いし、言い換えれば、そういう性格の人間がアートの世界には向いているのかもしれない。
     昔は零も似たような性格だったように思う。創作欲求が命じるままに、描きたいと思うものを、描きたいときに、好きなように描いていた。誰からの指図も受けずに。名が売れるにつれて、そんな時間はどんどん減っていったけれど。
     零は次第に、求められる絵を描くようになっていった。それはありがたいことでもあった。評価されること、作品を愛してもらえることそれ自体は、まぎれもなく喜びである。趣味でやっていたことが、次第に金銭が付きまとう仕事に変わっていた。
     初めは本を一冊買えるくらい。そこからみるみる値は釣り上がっていき、あっという間に一件の仕事を受けるだけで一か月の生活費が稼げるようになった。
     それでも零が精力的に絵を描き続けたのは、単純に絵を描くことが大好きだったからだ。最悪、絵で食べていけなくなっても実家に戻って家督を継げば何不自由ない生活ができるとわかっていたから、大金が手に入ることに大きな喜びを感じられなかった、というのもあるかもしれない。
     ただ、自分の手掛けた作品を愛してほしかっただけ。なんなら報酬なんてべつにいらなかった。周囲に、求める声の多さに見合うだけの値をつける必要があると言われたから、それらしい値段をつけ、報酬を受け取っていただけだ。零にとっての本当の報酬は「ありがとう」のひとことだったのに。
     作品につけられる0の数はどんどん増えていった。パリでできた友人たちと共同でアパルトマンに住み始め、彼らの描いた素晴らしい作品が、それに見合うだけの評価を受けられていないことに憤りもしたし、戸惑いもした。自分だけが必要以上に評価されてしまっているようで、罪悪感を覚えるときさえあった。
     その友人たちから、次第に除け者にされるようになり、疎まれ、妬まれ、一緒にはいられなくなった。零との才能の差を嘆いて筆を折った友人もいて、そのことでも大いに責められた。零にはただ「すまぬ」と謝ることしかできなかった。
     そのころには、絵を描くことは義務になっていた。求められる声にふさわしいものを。代償に見合うものを。自分のせいで画家の道を閉ざしてしまった人々に恥じないものを。零の内側では、ずっとそんな声がやまなかった。
    そうだ。自分には義務がある。描かなくてはならない。止まってはいけない。休んではいけない。零の作品を求める声がある限り。
     自分のアトリエを郊外に建て、そこに籠って創作に打ち込んだ。全身全霊を込めて、声に応え続けた。そうしているうちに、もしかしたらなにかをすり減らしていたのかもしれない。
    気づけば、描けない体質に変わっていた。若かりしころの自分がなにを描きたかったのか、今ではもう思い出せない。
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