二時間だけの回遊魚二車線道路の片側を走る車のヘッドライトだけが、この世界で唯一生きている生き物のようだった。
どんなに発展した都市だとしてもその隅は寂れたものである。それはどんな場所でも時代でも時代であっても変わらない。補助席に座りドア側に体を傾けると窓のガラスが鏡のように反射して自身の顔が映る。目の周りは落ち窪んだように暗く、ガラスの向こう側の夜の色が重なり見るからに顔色が悪く見えた。我ながらひどい顔だとミゲルは小さく笑った。自嘲である。
郊外の夜道の暗がりに潜んでいるものはなんだろう。遠い向こうに見える小高いものは山なのか丘なのかわかったものではない。あるいはミゲルの知らない名前をした街なのかもしれなかったし、はたまた木々の群れなのかもしれなかった。ただ夜目のきくミゲルの目ですら生き物の気配を感じることができなかった。ここは漂う空気さえもアース928によく似ていた。しかし似ているだけでやはりここはミゲルの世界ではない。
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