あのときよりも痛かったW杯決勝、冴からのパスを受け取って最後のゴールを決めたのは凛ではなく潔だった。そしてすぐに試合の終わりを告げる笛が鳴った。ああ、俺じゃダメだったんだ。そう思ったその瞬間、凛の胸にズキリと痛みが走った。数年ぶりに感じたその痛みはやがて大きくなっていき、凛は耐えられずその場で倒れ込む。それに気づいたチームメイトたちが凛の元へ駆け寄る。観客たちも突然の事で優勝に喜ぶ間も無くどよめいていた。
まるで今まで感じていなかった痛みが一度に襲ってきたかのようだった。どこかを怪我している訳では無い。しかし凛を襲う痛みは確かなもので、わけも分からずパニックになった凛は呼吸すらままならなくなった。
「ッ、、…ぅ、はッ、」
「凛!!凛!?どうした!?しっかりしろ!」
一番に駆けつけた潔が蹲る凛に声をかけた。その声に応えようとしたのか凛ははくはくと口を動かして声を絞り出した。
「ぃ……だ……、……ヒュッ、ぁ、」
「痛い?どこが痛いんだ?教えてくれ、凛…」
「どけ潔!」
焦った表情の冴が潔の肩を押し退けて背後から顔を出す。それからまじまじと凛の様子を見つめた冴は蹲ったままの凛の背中に手を添えて声をかけた。
「凛、落ち着け、聞こえるか?」
「にッ、ちゃ、っ、かひゅ、」
「凛、俺の呼吸に合わせろ、吸って、吐いて……」
「…ぅ、ハァッ、はーッ、」
「いいぞ、もう1回できるか?」
「はぁ……、う゛……」
そして凛の呼吸が安定した頃、凛は担架に乗せられてフイールドをあとにした。冴も付き添い、凛は救急車で近くの病院へ搬送された。
続かない