恋だ愛だと呼ばないで「愛してるよ」
いきなり目を見て何を言うかと思えば、ふとした拍子に乱歩がそんなことを言った。
「それはどういう意味だ」
「そのまんまの意味」
乱歩は食い下がる様子で、私は思わず乱歩のおでこを軽くトン、とたたいた。冗談だと自分に思い込ませたかった。
乱歩は、ふっと苦笑いをして目を閉じた。意識したことのない彼の長いまつ毛が、妙に息を詰まらせた。感じたことのない感覚で彼を見ている自分に気がつき、動揺する。
「ねぇ福沢さん、僕は逃げないよ、だからここで振るなら振ってしまって。」
戸惑い。ただそれだけの感情に、こんなに振り回されたのはいつぶりか。
俺はそこに、愛しているか?という問いに、嫌悪を感じなかった自分に、とてつもない嫌悪を感じ、そして咄嗟に乱歩を跳ね除けてしまったのだ。
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