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    まふなべ
    眞鍋せんせーがおしっこ我慢します
    序章だけ!

    おしがま ある日の深夜、教師・眞鍋瑚太郎のワンルームアパートに、奇妙な音が響いた。
     ──ゴンッ! ガラガラガラ……!
     床下から鳴り響くその音に、眞鍋は読んでいた書類を手から落とした。
    「……地震? いや、これ……下からだよな……?」
     寝巻きのまま、おそるおそる足元のカーペットを退かした瞬間、大きな音を立てて床が派手に割れた。木くずと土が飛び散るなか、そこから現れたのは──
    「やっと出られたー! やった、ボク……ついに地上に……!」
     赤い角。ふわふわした髪。童顔なのにどこか整った、美形の青年。
     背中にはコウモリのような赤い羽が生え、尻にはぴょこんと尻尾までついていた。
    「……は?」
     状況が飲み込めない眞鍋に、その青年・晨は、キラキラと目を輝かせて言った。
    「わぁ……地上って、すごいっ! 明るくて広く……」
     そこまで言って、言葉が止まる。
     晨の視線が、部屋の中をゆっくりと見渡す。
     六畳一間。よくある単身者用アパート。
     室内は綺麗に片付いているものの、机の上だけは教員の仕事で散らかったプリントの山。
     夢見た地上の絶景とは、まるで無縁。
    「……広くないね。つまんない」
     少年のような声で、悪魔は呆れた。
    「せっかくワクワクして出てきたのに、最初に見たのがこれって……うわぁ……地上って、微妙……」
    「いや、お前……! どっから湧いた!? 何者だ!?」
     やっと声が出た眞鍋が怒鳴ると、晨はきょとんとした顔で首をかしげた。
    「ボク? 地底の魔王の息子の晨だよ。地上に憧れて、自力で掘り進めてきたんだ~」
    「掘った!?」
    「うん。ツルハシで。……あ、あとそれ、食べ物だよね? 食べていい?」
     晨の視線が、ローテーブルの上にあった買い置きのチョココロネに吸い寄せられていた。
     眞鍋は唖然としながらも、何も言えずに頷いた。
    「やったあ! ん~、おいし~! ボク、これ大好き! 地上に来て良かった~!」
    (なんなんだコイツは……)
     呆れきったその瞬間が、眞鍋にとってすべての始まりだった。
     
     それ以来、晨は勝手に眞鍋の部屋に住みついた。
     
     そして昨日。晨はなぜか上機嫌で、にこにことこんなことを言い出した。
    「ねぇ先生、ボク、ちょっと面白い魔法をかけてみたんだ。先生限定の、特別なやつ!」
    「……嫌な予感しかしないんだが」
    「トイレじゃ、おしっこできない魔法~! でも、トイレ以外の場所とか、おもらしはOKだから安心してね?」
    「全然安心できねぇよッ!!」
    「魔法の発動は明日の九時からだよ!」
    「何が九時からだ!」
     こうして――眞鍋瑚太郎の、教師生命を脅かす羞恥との戦いが幕を開けたのだった。
     翌朝。眞鍋が出勤すると、職員室に見覚えのある悪魔が座っていた。
    「おはようございます、眞鍋先生!」
    「はっ……!? 晨!? なんで学校にいるんだ?」
    「あれ~、先生? 晨くん先生のこと知らないんですか?」
     隣のクラスの女教師が、意外そうな顔で振り返る。
    「晨くん先生、昨日から教育実習で来てるじゃないですか~。若いけどしっかりしてて、生徒にも大人気なんですよ?」
    「は、はぁ……!?」
    (完全に記憶が書き換えられている……! )
     晨が無邪気に小声で囁く。
    「ボク、魔法でみんなの記憶をちょっと改竄しちゃった。これから先生といつでも一緒だね!」
     眞鍋は絶望的な気持ちになった。
     
     そして、授業中。
    「……っ、く……!」
     眞鍋は教壇の前で冷や汗を流していた。
    (出ない……本当にトイレじゃ出ないのか……!)
     先ほどから何度かトイレに駆け込んだが、一滴も出なかった。
     すでに膀胱はパンパン。教師としての理性が保てるギリギリのラインだ。
     そんな苦悶の眞鍋を、真隣にいる晨が覗きこんでいる。
    「先生、もうお腹パンパンでしょ?」
     晨が目を輝かせて楽しそうに小声で囁く。
    「授業、あと三〇分もあるけど……我慢できる?」
    「くっ……お前、後で覚えてろよ……!」
     生徒たちは不思議そうな顔で眞鍋を見ている。
    「先生、顔赤いけど大丈夫?」
    「ん、ちょっと今日は、暑いかな」
    (だいじょうぶじゃない……もう限界だ……! )
     教室の隅に移動し、ニコニコと笑いながら見つめてくる晨が指をパチンと鳴らすと、眞鍋の腹部にズシリと圧迫感が増した。
    「ひっ……ぅ!」
     思わず膝を曲げ、身体を前傾させてしまう。
    (先生、いま漏れそうになった? )
     頭の中に直接語りかけてきた晨の囁きは甘く、背筋がゾクリと震える。
    (トイレ以外ならすぐ出せるのにね? ほら、教壇の下とか……)
    (ぜったい……嫌だ……っ! )
    (じゃあ学校の裏は? 誰もいないし……先生がそこで恥ずかしいのを我慢しながら出すの、ボク、見てみたいな~)
     羞恥で眞鍋の頬が赤く染まる。
    (う、うるさい……静かにしろ……! )
     授業の終了チャイムまで、あと二〇分。
     晨の視線を背中に受けながら、眞鍋は震える脚で必死に堪え続ける。
     彼はまだ、この悪魔が次にどんな意地悪な仕掛けを用意しているかを知らなかった。
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