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    u_tm_275

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    【ろくがつのふたり。】
    過去作サルベージ。
    月。/涙結
    つきハピ!【ツキノっ子幸せリレー企画】参加作品。

    #二次創作
    secondaryCreation
    #涙結

    ろくがつのふたり。「涙! ねえ、涙!」
    「どうしたの、結乃?」
    「ヤマトが初めて抱っこさせてくれたんだ! ほら見て!」

     六月のある日――
     プロセラルムの共有ルームでくつろいでいた水無月涙のもとに、照瀬結乃が興奮で目をきらきらさせながら駆けよってきた。その腕の中には、黒猫のヤマトが大人しく収まっている。
    「ついこの間までは、撫でさせてもらえるのがやっとだったんだ! それなのに、ほら……!」

     結乃は時々、姫川瑞希とともにツキノ寮を訪れる。仕事の打ち合わせのためがほとんどだが、稀に今日のようにただ遊びに来ることもある。そんな時、彼女は決まって寮の動物たちと戯れるのだ。
     かわいいものが大好きで、もちろん動物も大好きな彼女に、ほとんどの動物たちがすぐ懐いたのだが、その中でなかなか懐かない子が一匹だけいた。それがヤマトだった。
     最初の頃は結乃の姿を見とめただけで逃げ出し、近づくことさえままならなかった。それでもめげずに接していたおかげで、最近やっと触っても逃げられないようになっていたのだ。
    「ねえ、涙! ずっと抱っこしてても全然逃げないんだよ! これ、夢じゃないよね!?」
    「う、うん、大丈夫。夢じゃないよ」
     興奮した結乃のテンションに気圧されつつも涙がそう答えると、彼女は嬉しそうに顔をほころばせた。
    「ヤマト~。やっと私のこと信用してくれたんだね~」
     そう言って腕の中のヤマトに頬ずりする彼女を見つめながら、涙はどこか納得のいかないような顔をした。
    「信用……?」
    「ん? どうかした、涙?」
     ヤマトを床に下ろしながら不思議そうな顔を向けてくる結乃に、涙はぽつりと告げる。
    「信用……じゃないと、思う」
    「えっ……」
     あからさまにショックを受けた顔をする結乃に、涙は慌てて言葉を続ける。
    「えっとね、結乃。ぼくが言ったのは悪い意味じゃなくてね……。〝信用〟じゃなくて、結乃が〝信頼〟できる人だって分かったから、ヤマトも気を許したんだと思うな」
    「信頼……」
    「うん」
    「信頼、かあ……」
     噛みしめるようにもう一度つぶやき、結乃は照れたような笑みを浮かべた。
    「うん、なんだか〝信用〟よりも〝信頼〟って言われるほうが嬉しいな。ありがとう、涙」
    「うん……あのね、結乃」
    「ん? なあに?」
    「ぼくも、信頼してるよ」
    「えっ?」
     涙の突然の言葉に、結乃はきょとんとした表情で目をしばたたかせた。
     そんな彼女から恥ずかしそうに目を逸らしつつも、涙は懸命に言葉を紡ぐ。
    「ぼくも、結乃のこと、信頼してる。だから、その……」
    「私も、涙のこと信頼してるよ」
     その言葉に導かれるように、涙は再び彼女へと視線を向けた。
    「涙のこと、信頼してる」
     優しい笑みを浮かべながらもう一度そう言ってくれる彼女に、涙の顔にも嬉しそうな笑みが浮かんだ。
    「ありがとう、結乃……」
    「こちらこそありがとう、涙。――同月担当として、これからもよろしくね!」
    「う、うん! よろしくね!」


         ◇


    「涙……前はあんなに人見知りが激しかったのに、今ではもうすっかり……お父さんは嬉しい!」
    「あらあら、海さんったら」

    ※涙結を遠くから見守る海瑞の図。
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