あなたをアンインストール「陽をアンインストールできたらいいのに」
そう言った祭莉の瞳は揺れていた。今にもなにかが溢れてしまいそうなくらいに。
でも、まだ触れてはいけない気がして。俺は笑って気づかないふりをした。
「俺はアプリかなんかかよ」
くしゃりと頭を撫でてやれば、その瞳の翳りは消えてくれたけれど。俺の胸の重みは増すばかりで。
……なあ、頼むから。
もう少しだけでいいから、この気持ちに気づかせないでくれ。
もう少しだけでいいから、お前は〝妹〟なんだって思わせてくれよ――
◇
「陽をアンインストールできたらいいのに」
そう言った私の気持ちに、気づいていないわけがないのに。
「俺はアプリかなんかかよ」
陽はそう言って、また笑ってごまかした。
頭を撫でてくれるのは嫌いじゃないけれど。
お願いだから、もう妹扱いはやめて!
ひとりの女の子として私を見て!
でも、陽の顔を見たら、そんなことも言えなくなって。
……なんで? ねえ、なんで?
どうして、そんな泣き出しそうな目で私を見るの?