待宵月 自室のベッドに寝転がり本を読んでいると、頭上の窓の外が急に明るくなったように感じ、俺は光源を探して顔を上げた。するとそこには、雲間から姿を現した大きな月が。
「すげえ……満月かな」
「いいえ、待宵月ですよ」
……独り言への返事にももう慣れてしまった。
声がしたほうを見遣れば、やはりそこには、いつの間にか侵入ってきたらしい猫又の姿が。
「なんだって?」
「待宵月です。満月の一日前の月のことですよ」
「へえ……」
永く生きているだけあって、そういう知識は豊富なんだなあ。
「じゃあ、明日は満月か」
「そうですよ」
満月だと知ると、不思議と明日の夜が待ち遠しく感じてきた。月を愛でる日本人の性だろうか。
明日も晴れますように!
お題【待つ】
(三〇〇字)