器用な尻尾の産物 家に帰ると、俺の部屋で大量のエノコログサ――ねこじゃらしが待っていた。
どこから持ってこられたかは分からんが、誰が持ってきたかは一目瞭然。
「猫又!」
「なんですか、少年?」
俺の怒声に、ねこじゃらしの山から猫又が顔を出す。
「なんですか? じゃないわ! 人のベッドの上に変な山を築くな!」
「変な、とは失礼な。エノコログサですよ」
「名前の話じゃねえ!」
だいたい、こんな大量にどうしたんだ。
尋ねてみれば、自分で摘んできたと言う。
「こう、ひょいっと採るのが楽しくなっちゃって」
山の中から数本、二股の尻尾で持ち上げて手折る仕草をしてみせる姿は、なるほど器用だ。
……だからって。
「なんで俺の部屋に持ってくるんだよーーー!」
お題【折る】
(三〇〇字)