向日葵 我が家では、毎年夏になると向日葵が大輪の花を咲かせる。夏生まれの俺の花だからと、両親が庭の一画で育てているのだ。
俺は男なのになぜ花を育てるのか。
花=女の子のものと思っていた幼少期に両親に尋ねたことがある。
返ってきた答えは――
「向日葵のように明るく育ってほしいから……ね。暗い子だったんですか?」
「他人には見えないものが視える、聞こえないものが聴こえる……暗くならないほうが難しいだろ」
幸い、前述の通り両親から大事にされて育ったおかげで、そこまでひねくれずに済んだんだが。
「俺の分まで食うなよ、猫又」
「はいはい」
――今年も立派に咲いた向日葵から収穫した種をつまみながら、猫又と無駄話ができるぐらいには。
お題【育つ/育てる】
(三〇〇字)