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    153khkd_omt

    @153khkd_omt

    気が済んだら消えたりする物が置かれています。

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    153khkd_omt

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    資料室とラウンジの間にあるあのスペースのラグ、月に見えるな…と思っただけ
    丹星(のつもり)

    #丹星
    #danstelle

    月に微睡む「はあ…」
     丹恒は作業の手を止め、デスクの端に追いやられていた端末を手に取る。時刻を確認すると朝と呼ぶにはほど遠い時間であった。
     眠りたくない、という訳ではないが、今日は布団に入って目を閉じても一向に眠ることが出来なかった。眠れないのであれば眠くなるまで手を動かしていようと思い、アーカイブへの記録作業を行っていたが、それも全て済んでしまった。
     それでも依然として眠気は訪れておらず、丹恒はどうしたものかと考えを巡らせる。一番初めに浮かんだものは読書をする事だったが、手元にある本は全て読み終えてしまっている。では外出でもしてみようか?それも次の星を目指して宇宙を走っている最中の為叶わない。そもそも、車掌が夜間の外出を許可しないだろう。
     あれこれと考えはしたものの、結局いい案は浮かんでこなかった。ならばせめてもの気分転換として飲み物でも取りに行こう、そう思い廊下へ繋がる扉を開いた。
    「フン、ブヒブヒ…」
    「お前は…」
     扉を開けると足元から鳴き声がし、視線を下に向けるとそこには次元プーマンが鼻先を動かしてこちらを見上げていた。厳密には本物の次元プーマンではなくエーテル体らしいそれ、何をどう見たらその名前になるのかは分からないが、毛玉と名づけられたプーマンは丹恒の傍まで来ると、ズボンの裾を咥えぐいぐいと引っ張った。
    「何かあるのか…?」
     毛玉の後に続き資料室を出ると、毛玉はラウンジがある方に向かって歩きはじめ、すぐに右に曲がった。その先にあるのは普段は毛玉が自分の部屋の様にくつろいでいる小さなスペースしかない。とりあえず後に続いた。
     そして床に敷かれたラグの上に転がっているものを見て丹恒は盛大にため息をついた。
    「星…」
     そう呼ばれた少女、もとい星はすやすやと寝息を立てている。ブランケットは蹴り飛ばされたのか壁にもたれているし、その際に捲れてしまったのか本来なら服の下に隠れている筈の腹も盛大に出てしまっている。これが星の自室でベッドの上であれば、ああ、寝相が悪いのだな、という感想を持つだけで済んだのだが、生憎ここは星の自室ではないし、ましてやベッドの上ですらない。
     そもそも彼女の部屋はまだ用意できておらず、普段はラウンジのソファーで寝ている筈だ。夢遊病の可能性は0ではないが、ブランケットがこの場所にあるのだから、恐らく自分の意思でやって来たのだろう。
     一人考えを巡らせている丹恒をよそに、毛玉は星のシャツの端を咥えようと星の周りをくるくると回っていた。しかし、もう少しで咥えられそうだとなった瞬間、星が寝返りを打ってしまい叶わない。
    「ブヒ…」
    「お前はこの腹を出して寝ている主人をどうにかしてほしくて俺を呼んだわけか…」
     丹恒の言葉を肯定するかのように毛玉が小さく跳ねる。本日何度目か分からないため息をつき、丹恒は星のシャツを正した。そして壁に飛ばされた哀れなブランケットを拾い上げると、それで星の身体を包み、起こさないように慎重にその身体を持ち上げた。
    「フン、フフン…?」
    「ラグの上と言っても流石に身体が痛くなるだろう 俺の布団が空いているから、そこに寝かせるだけだ」
    「ブヒ…」
    「また腹を出して寝ないか心配なら、お前も一緒に来ればいい」
    「フン、フフン!」
     毛玉の言っていることはよく分からないが、反応を見るに否定的なわけではなさそうだ。
    「んぅ…」
     丹恒に抱えられていた星が居心地が悪いのかもぞもぞと動き始めた。そして、数秒身じろぎを繰り返した後、丁度良い位置を見つけたのか再び規則正しい寝息を立てはじめた。
    「そろそろ行くぞ このままだと目が合った瞬間説明を求められそうだ」
     そういうと丹恒は資料室に向かって歩みを進めた。毛玉はその後ろを軽い足取りで追いかける。星を見つけてからため息ばかりついていた丹恒が、少しだけ優しい目をしていたことは、毛玉と呼ばれたプーマンだけの秘密となった。

    翌朝毛玉が目を覚ました時に見たものは、昨日の優しい目はどこへ行ってしまったのか、眉間に皺を寄せ頭を抱える丹恒と、目を輝かせながら丹恒に詰め寄る星の姿だった。

    「丹恒、そういう事でいい?」
    「良くない お前が廊下で寝ていたのを回収しただけだ」
    「これが朝チュンってやつか…」
    「違う」
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