「4代目って本当可愛いですよね」
「……はっ?」
素っ頓狂な声が思わず出てしまったがこれは悪くないと思う。
普段染谷は桐生に対して「かわいい」などと言った覚えが無い。だが今はっきり声に出して言ったのだ。かわいいと。
「聞こえなかったんですか?4代目、かわいいです」
「いや聞こえてたが…こんなおっさんに可愛いは無いだろ」
「いや、4代目は可愛いですよ」
ふわりと微笑み、伸ばした指先で桐生の頬を優しく撫でる。珍しく直接的な言葉を言う染谷にみるみる内に頬が赤く染まっていった。
「赤くなってる顔も可愛い」
「お前…酔ってるだろ」
「酔ってますよ…貴方の瞳に、ね」
「……お前なぁ」
さらりと恥ずかしげも無くそんな台詞を吐くので逆にこっちが恥ずかしくなり心臓が煩いほど鳴っている。
この鼓動を聞かれるとさらに相手が調子に乗ってしまうと思い立ち上がろうとしたが腕を引かれバランスを崩してしまう。バタン!と後ろに思いっきり倒れてしまい衝撃で閉じていた目を開けると目の前の染谷の顔が異様に近く感じた。
じっ、と見据えるその目に吸い込まれてしまいそうで誤魔化すように身を起こそうとするが腕を縫い付けられてしまう。
「おい、っ!」
「きりゅ、うさん…可愛い」
そっ、と耳元で囁かれ肩が跳ねる。甘く溶けるような声に血液が沸騰したかのように体中が熱くなった。
早くこの酔っぱらいをどうにかしなければと混乱する頭で考えているとずしりと目の前の男が寄りかかってくる。
「おい、染谷!」
声を掛けるが反応は無く息が聞こえるだけ。どうやらあれだけ口説いた挙句寝てしまったようだ。
「期待させておいて寝やがって…」
せめてもの仕返しに頬をつねってやるが起きる気配は無かった。
ずっとこの熱は冷めないだろうと先程の染谷の微笑みを思い出しながら考えた。