隣の家の篤京くん うちは田舎だから、近所の人はみんな知り合い。特にお隣の遠野さん一家とは付き合いが長くて、一人息子の篤京くんとは腐れ縁みたいなものだ。私の歴代の好きな人も知られているし、お互い異性として意識したことはない。篤京くん、背が高くて顔も整っているからモテるんだけど、ちょっと変わっていて不思議な子だと思う。それでも赤ちゃんの頃から知っているから、顔を合わせれば普通に話すし、どちらかというと親戚に近い感覚かもしれない。
朝、遠征から帰ってきた篤京くんと久々に鉢合わせした。彼氏ができて浮かれていた私は、彼女とかできたの?と聞いてしまう。てっきりいつものように鬱陶しそうな態度を取られるかと思いきや、「……彼女はもうできねーかもしんねえな」だって。意味深だ。言葉からしたら酷い失恋でもしていそうなのに、篤京くんは楽しそうだった。やっぱり変わっているなと思ったけれど、多分幸せなのは伝わってきたから、良かったねと言ったら変な顔をされた。
End.