触れられたい話「ねぇ、へべ…」
へべの細くて頼りない手首を掴む
「えっ…」
そして、ゆっくり、骨ばった手を
自分の顔の近くまで持っていく
「ちょっと、まって…!」
へべの指先は震えていて、視線を泳がせてる
手から冷たい汗が伝わってくる
恥ずかしさからくる照れよりも
怖さの方が上回っているような様子だ
しまいには、目を強く瞑って、俯いてしまった
「ねぇ、大丈夫だよ」
寝起きのときみたいに
ゆっくり目を開けようとするへべ
「僕は、そう簡単には壊れないから」
へべの手を自分の頬のあたりに持っていき、そのことを身体に実感させる
へべは、一瞬、ようやく視線を自分の方に向けてくれたかと思うと
驚いたときのように、目を見開き
また俯いた
「どうして…、こんなことをするの…?」
泣きそうなのを堪えた震えた声、
「君に触られたいだけじゃ理由にならないかな?」
「………、
俺なんかに…、だいぶ物好きだね…」
落ち着かない指先
へべは、自分の手を見ながら吐き捨てるように呟いた。
以前から触ってこないなと思ってたけど、ここまでとは思わなかった。
震える手の感触、伝わる汗の温度
見開く目と強く瞑った目の表情
機械で記録したときくらい、正確に思い出せると思う。
ちょっと触れたら、すぐに動揺するくらい、脆い君はいとおしい
でも、いつか慣れてくれないかな…
そう思いながら、静かな部屋で
君の抜け殻をぎゅっと掴んだ