万葉がふたりおはようのキス。
好きな人の口づけで目覚める……どんな感覚なんだろう。
バッサバッサと魔物を薙ぎ倒してきた私だが、密かに憧れる気持ちがあった。これでも一応女の子だし。
(……けど)
ここは稲妻のとある山林。やむを得ず野宿をした次の日の朝──何やら唇に柔らかい感触があり、私は瞼を開けた。……そこには。
「蛍、おはよう」
私に覆い被さる形で心底嬉しそうに笑う万葉がいた。眠気まなこが嫌でも覚めてきて……。
「あはは!寝ぼけているでござるか?……ならばもう一度起こそう」
ちょっぴり意地の悪い笑み。今、もう一度と言ったか?一体何を?あれ、そんなに顔を寄せたら唇が触れてしまう……。
「っわあああ!」
凄まじい勢いで突き飛ばしてしまった。草の中にどさりと落ちる万葉。はあはあ喘ぎながら身を起こす私。
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