ルークin昭和 頭上には満天の星空が広がる。昼間、一日一冊本を読むという課題の元、図書室でふと目に入った児童書には星空へ祈ると願いが叶うなんてことが書かれていた。そんなことはないとわかっているつもりだった。
しかし勉強漬けの毎日に、何処か余所余所しい使用人たち、一度行方不明になった焦燥感からのきつい監視の目。軟禁状態と言っても過言ではない。そのくせ両親たちは記憶をなくした息子とどう接すれば良いかわからない、というように距離を取る。
こんな閉塞感に満ちた日々から抜け出させてくれたらば——どうにもそんなことを考えてしまう。
水木はあんぐりと口を開いたまま、固まっていた。それはせっかく用意した朝飯がちゃぶ台の上でグチャグチャになっていることやら、その上に、明らかに日本人の髪色や雰囲気ではない少年が目を見開いたまま固まっていることやら、その少年が突然にちゃぶ台の上に降ってきたことやら、寄りにも寄ってそんなところに落ちてきたことやらによる驚きだった。
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