それは月の形に似ている規則正しく並んでいる街灯が、その横顔を照らしては隠していく。外の光源だけに頼る車内はひどく暗くて、しっかりと見つめていても普段捉えている輪郭も朧気に映っている。
この視線に気づいているだろうか。シートに体を預けながら、薫は考えもまとまらない頭で思案する。もしかしたら気付いていないかもしれないなぁ。一点に集中するとどこまでも突き抜けていくところがあるから。
それは、なんだか惜しいな、と思う。今はなんとなく、晃牙の声を聞きたい気分だったのだ。
声をかけてしまおうか。きっと応えてくれるだろう。けれど、夜の運転は視界の情報が少ないのだ。運転免許を取得してから幾度となく車を転がしているとはいえ、やはり夜道を走るのは緊張するのだろう。どこか硬い面持ちをしている。とても真面目な晃牙らしい。その集中を乱してしまうのは、良くないことだ。
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