メッセージボトル ビクター・グランツはポストマンである。
仲の良い子犬と共に銅の鈴の音を聞き、待ち望む人々に手紙を送り届ける。
いつか、自分宛ての手紙が届いたらいい。そんなささやかな願いを持つ、しがないポストマンに過ぎない。過ぎなかった。
ビクター宛ての手紙は届けられ、その願いは叶えられた。
招待状という形ではあったが、あの手紙には誠意が込められていた。
ビクター・グランツという名前が書かれているのを見るだけで、彼は高揚した。そして、今度はやり取りを目的とした手紙を欲して、招待されたエウデリィケ荘園へと向かった。
しかし、この場に手紙を送り届ける相手はもういない。
(良かったね、ビクター。君はもう、役目を終えたんだよ)
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