無能だからとパーティを追放された俺が実は○○○○だった件〜今更戻って来いと言われても遅い!〜最近パーティのメンバーが俺を無視する。
理由は分かっている。戦闘で得た報酬を全部川に落とす大ポカをやらかしたからだ。おかげでこのところずっと野宿だ。
メンバー内の空気も険悪で、ほとんど会話もなくなった。
俺は…申し訳なさすぎて、ずっと隅で小さくなっている。
ある日、リーダーが重々しく口を開いた。
「次の街で、代わりの新しい剣士を探そう」
サーッと血の気が引くのを感じた。このパーティの剣士は俺だ。
「待てよ!報酬をパアにしたのは悪かったよ!でもそれはないだろ!」
流石に我慢できず食い下がったが、彼は青黒い顔で口を閉ざしたままだ。
その夜、俺は荷物をまとめてガキみたいに泣きじゃくりながら皆の元を離れた。こんなに冷たい連中だとは思わなかった。俺はそれなりに役に立っていたつもりだったのに…確かに報酬は落とすし、居眠りして荷物を取られたこともあったし、この前は戦闘中に足を引っかけて術師を怪我させたし…あれ?
考えれば考えるほどパーティ追放が妥当で気が塞いできた。
それでも俺は能天気なので、日が昇る頃にはすっかり立ち直って、大きな街を目指して歩いていた。ここでまた、新しい仲間を見つけよう。
街に着き、冒険者ギルドの案内役に話しかけると、そいつは俺の顔をチラリと見てすぐに顔を逸らし「奥の席でお待ちください」と吐き捨てるように言った。嫌な奴だ。
しかもそこから随分待たされた。
もう日が落ちかける頃になってようやく、俺の席の向かいに男が座った。
その若い男は聖職者のような服を着ていたが、見たこともないシンボルをあしらった金銀の装飾品を身につけていて堅気には見えなかった。
「こんにちは、お仲間をお探しだと聞きましたが」
低く通る声で男が話しかけてきた。
怪しい奴だが、まず声をかけなくては始まらない。
「そうなんだ。俺は剣士をやってる…やってたが、パーティの仲間とその…仲違いして、抜けてきたんだ」
「なぜ仲違いしたのですか?」
「……俺が報酬をダメにしちまったから、かな」俺は気まずくなりながら答えた。言うべきではなかったかもしれない。
「お仲間からそう罵倒されたのですか」
「いや、そういうわけじゃない。それならもっとマシだ…ずっと俺を無視するようになって…」
男は俺を品定めするように眺めている。
「で、でも、剣の腕には自信がある!ドラゴンも倒したことがあるんだ!ほら、鱗も持ってる…」
「お仲間はいつからあなたを無視するようになりましたか?」
焦る俺の言葉を遮り、穏やかに彼が問いかけた。懺悔室で罪を悔いているかのような気分になる。
「えっと、そうだな…丸1ヶ月はそんな感じだったけど…いつからかというと…」
「最後にお仲間と交わした言葉を思い出せますか?」
「さ、最後?」
報酬を川に流したあと、リーダーにはまあ気にするなと言われた。呆れ返った術師には皮肉を言われ、弓使いは笑っていた。
野宿の場所をみんなで探した。
俺はみんなに申し訳なくて薪や寝床に使えそうなやわらかい草を必死で集めた。
そのあと……。
「思い出せませんか?」
男は穏やかな表情のまま眉を困らせた。
「なぜ、思い出せないのか、不思議じゃありませんか?」
「何が言いたい」
俺の声は震えていた。
男は荷物の中から手鏡を取り出し、俺に差し出した。
「さあよく見て。思い出してください」
恐る恐る覗き込むと、そこには顔の半分が欠けて無くなった男がいた。
「あなたは死んでいるんですよ」
鏡に小さな亀裂が入った。
無能だからとパーティを追放されたと思っていた俺は実は1ヶ月前に死んでいた件〜今更戻ってこいと言われても遅い!みんな、本当にごめん!〜