過ぎゆくもの、寄り添うもの便りがないのは良い便り、とは良く言ったものだ。まだ20年程しか生きていない私でさえ、この言葉に頷くことはままある。
しかし、こと私の知己の一人である、カイン・ナイトレイについては少し状況が違う。
私の元クラスメイト、そして元騎士団長、現賢者の魔法使いである彼は、その華やかな肩書きにも関わらず、便りを寄越さない時には会いに来て、直接近況を語ってくれるからだ。そして、彼の身に何かあるときには、大抵話は本人以外から届く。つまり彼においても、便りがくる時というのは良くないことのサインだとも言える。
例えば、数年前。カインが中央の城に程近い市民病院に運ばれたというニュースは、私の母からもたらされた。母はカインのお母さんと仲が良く、昨日の晩相談されたのだそうだ。
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