白銀への想い 白銀への想い
彼を一目見た時から、綺麗な人だなと思った。
白銀の髪が、陽の光を浴びてキラキラ輝いて見えて、触れたいと思った。
「⋯⋯ラ⋯⋯キラ!」
「っ! はい!」
ぼんやりとイザークを見詰めていると声を掛けられたことに直ぐに気が付けなかった。
「何をそんなにぼんやりとしている。シャキッとせんか!」
「う、うん。ごめん⋯⋯」
ザフト軍内でキラはイザークと共にランチを取っていた。
オーブ軍からの出向でザフトに居るキラだが、あまり食事を取らずに仕事ばかりしていると聞き、同じ白服のイザークが面倒を見る事になった。
「⋯⋯早く食べろ。お前、少食過ぎないか?」
キラの手にはサンドイッチが1つ。一口だけ齧られてから進んでいない食事にイザークは眉を顰める。
「そ、うかな? 前からそんなに食べれなかったし」
「いくらお前が軍人としての訓練を受け受けていないとはいえ、そんなんじゃあ栄養が足りんぞ! だからこんなに細い!」
イザークはサンドイッチを持っていないキラのて首を持つと、あまりの細さにますます不機嫌そうな表情を浮かべる。
「⋯⋯いつからきちんと食べていない?」
「え?」
「この細さはここへ来てから食べれていない訳じゃないな? もっと前からか?」
イザークの鋭い眼光に、キラは怯えること無く苦笑を浮かべた。
「⋯⋯ご飯があまり食べられないのは、ずっと前からだよ。けど、大丈夫。最近は食べれる量も少しずつ増えてるんだよ? それに、ランチはあまり食べれなくても夜なら⋯⋯」
食べてるからと言い逃れしようとしたが、すかさずイザークに逃げ道を絶たれてしまった。
「⋯⋯なら、今夜は俺と食事に行くか?」
「へ?」
「お前が好きそうな店を見つけた。あそこならお前も食べれるだろう」
「⋯⋯僕の好きな物、覚えてくれてたの?」
じっとイザークを見ると、ふいっと顔を逸らしたイザークの耳が赤くなっているのが見えた。
「⋯⋯お前の好きな物なら、忘れない」
「イザーク⋯⋯ありがとう」
イザークの優しさに嬉しくなる。
敵対し刃を交えた事も1回や2回どころでは無い。
戦後初めてザフトで顔を合わせた時は、彼から逃げてしまい嫌われてもおかしくはなかったのに、イザークはキラを気に掛けてくれた。
「ねぇ、イザーク」
「なんだ?」
「髪⋯⋯触れてもいい?」
「なんっ!?」
「ダメかな?」
「ーーっ! 好きにしろ!」
キラの滅多にしない頼みにイザークは弱かった。
キラキラと輝く白銀の髪はサラサラとしていてとても綺麗だ。
「イザークの髪綺麗だね。キラキラして。僕、イザークの髪好きだな」
「ーーっ! お前はっ!」
「うわっ!」
ガバッと急にイザークに抱き締められて、驚きに声を上げる。
「我慢していたのに、お前が! くそっ!」
「イザーク⋯⋯?」
「キラ。お前が好きだ」
「え?」
身体を離され、イザークはじっとキラを見る。
その真剣な眼差しに、視線が外せられない。
「⋯⋯お前は、俺の事をどう思っている?」
「⋯⋯僕、も。イザークの事好きだよ」
イザークの言葉が嬉しくて、自分の気持ちを素直に答えた。
どちらともなく目を閉じキスを交わす。
キスがこんなに甘い物だと初めて知った。
以前のキスはどこか切ない物だったから。
「⋯⋯もう、お前を離せないぞ?」
「⋯⋯僕も。イザーク、離さないで⋯⋯」
「ーーっ! 煽るな!」
「ええー」
真っ赤な顔でイザークが言うから、キラも急に恥ずかしくなって頬が赤く染まる。
こうして、イザークとキラは恋人関係になり、ディアッカに散々なんでこうなったのか根掘り葉掘り聞かれ、キラは恥ずかしくなり、イザークはディアッカにブチ切れたのだった。