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    ユウリ

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    ユウリ

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    リコ玻璃に触発されたヒースがケイとの関係改善に挑む話です。
    リコ玻璃ちょろっと出てきます。

    正しい恋人の在り方「いいじゃん、キスくらい」
    「だめです、人が来たら、っん」
     そんな声が廊下に響く。それが聞こえたヒースは己の耳を恨んだ。チームメイトと女の秘め事なんて知りたくもないのに、勝手に音を拾って持ってきてしまう。こんなのセクシャルハラスメントもいいところだ。最低最悪だ。この世のものとは思えない非人道的な行為だ。どうしてここまで強く非難しているかって、その角を曲がらないと事務室に行けないからだ。どうにも腰が痛んでいけないから休みたいというのに、仲間の手によって邪魔をされている。なんと悲しいことだろう。
     そう考えたらなんだか腹が立ってきた。そうだ、リコの全てを蔑んだ最高のリリックを刻もう。アイツとどこぞの女の密会を邪魔してやろう。そう決心したヒースは足を一歩、二歩と進め、その決断をすぐ後悔することになる。
    「リコ、そこで何して——えっ、玻璃!?」
     リコが場所も厭わず欲しがる相手は、スターレスきっての堅物だったのだ。
     
     
     事務室のソファに腰を落ち着け、ヒースは目の前の二人が口を開くのを待った。申し開きを望むなら好きにすればいいと言った結果だが、時間をかけてもいいとは言っていない。はやく終わらせて休ませてくれないか。
     そう思っていると玻璃が意を決したように口を開いた。そしてそこから溢れてくるのは堅苦しくって肩が凝るような文字の羅列。
    「ヒース、不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。今後はリコと店内で二人きりにならないなどの対策を」
    「別にいい。サキに見せないでくれたら、それで。……ふたりは、その、付き合ってるの?」
     疑問の形で問いかけてはみるけれど、ヒースは二人が恋愛関係にあると確信していた。確信せざるをえなかった。ただの同僚を壁に追い詰めて腕の中にしまい込むような真似、リコがするはずないのだから。
     気まずそうに顔を赤らめながら俯いた玻璃に代わり、リコが嫌そうに答えた。
    「そうだったらなに」
    「リコ」
    「チッ。……はぁ、」
     不機嫌を隠そうともしないリコの態度を玻璃が諌める。すると彼は舌打ちをしたがそれ以上毒を吐くことはなかった。あのリコが、随分とおとなしいものである。こんな姿を見てしまってはヒースにも少しばかり悪戯心が芽生えてしまう。
    「カレシの言うことは聞くんだね。そういえば、今までも仕事中玻璃に怒られてる時は大人しかったけど、それもこれが理由? 好きな人には強く出られないの?」
    「はぁ!? 違うし。ただこいつ言い返すだけめんどくさいから、」
    「そんなふうに思ってたんですか」
    「ちがっ、……あーっ! くそ!」
     どうせ違わない。けれどそれを玻璃に伝える勇気はないらしい。恋人から冷めた視線を送られたリコは悪態をつきながら髪を掻きむしった。
     あの自分本位な男が尻に敷かれている。その事実は下手なコメディドラマなんかよりもずっと面白くて、自分が風見以外のことで優しく笑えたことが妙に嬉しかった。
    「ま、オレは二人が付き合ってても気にしないよ。でも店の中で盛るのはやめて。絶対」
    「はい」
     言われた言葉を胸に刻み込むように目を閉じる玻璃の顔は男から見ても整っている。リコがうっかり手を出してしまうのも仕方ない。そんな気がした。
    「あ、そうだ玻璃。リコが相手なら大丈夫そうだけど、これあげる。よく効くから使って」
    「え? これは……」
    「塗り薬。ごめん、もっと良いやつ使ってる?」
     直径五センチメートル程度のチューブタイプのそれは店に来る前泌尿器科から処方されたばかりのものだ。医師から処方された薬を他者に渡す行為は軽犯罪にあたるが、そんなことをいちいち気にするヒースではない。彼はただ親切心から、同じ悩みをもつ者を救おうと考えているのだ。
    「いえ。そもそも塗り薬がいつ必要に?」
    「? 事後だけど……うわっ!?」
     事後、そうさらっと告げた途端リコが口にしていた缶コーヒーを吹き出した。拍子に変なところにコーヒーが入ったのだろう。彼は自慢の髪を振り乱しながら激しく咳き込んでいる。玻璃は努めて冷静にリコの背をさすり、ハンカチを差し出しているがその顔には『心配』の二文字が大きく浮かんでいる。
    「リコ、大丈夫ですか?」
    「げほげほっ、げほ、っ……ハァ、ハァ……ゼェ、」
    「だめそうですね。落ち着いて」
    「ゼェ……ゼェ……。はー、もう大丈夫、手ぇどけて」
     散々心配をさせておいて失礼な物言いだが、玻璃は気を悪くした様子も見せずにそっと離れた。きっとこんなやり取りにも慣れているのだろう。どうして自分は今まで知らなかったのだろうか。
    「興味の問題かな」
    「は? なに」
    「二人に興味がないから、気づかなかったのかなって」
     全くないわけではないと思う。けれど大切なのは自身の刻むリリックと、風見。そもそも生命活動を維持することで精一杯の自分だ。仕方のないことかもしれない。
    「あなた以外にも気づいてない人はいますよ。というか、知っている人のほうが少ないです。話を戻しても?」
    「え、どこに……ああ、それね」
     塗り薬は事後に使うものだと言ったところでリコが吹き出して会話が中断されたのだった。全く、失礼な話である。受け手に回る自分たちにはこういった苦労もあるというのに。
    「セックスすると後ろが痛むでしょ。リコは器用だし怪我も最小限で済んでるかもしれないけど、痛むようなら塗ったほうがいい」
    「……ヒースにもそういう相手がいるんですね」
    「え、うん」
     そういえばそれを伝え忘れていたな。うっかりしていた、とヒースが軽く反省する一方で、リコと玻璃は無音の会議を開いていた。これは自分たちが口出ししていい問題なのか、こんなことを聞いてしまっては失礼ではないか。否、聞かずに彼が大きな怪我をするほうが問題だろう、と。
     どっちから聞く? あなたから。さらりと大役を押し付けられたリコは思わず舌打ちをしそうになったがぐっと堪え、どこを見ているのかよく分からないチームメイトに声をかけた。
    「ヒースあのさ、それって大丈夫なやつ?」
    「なにが?」
    「あなたと相手の関係ですよ。知識不足なら力になりますし、無理を強いられているのなら弁護士を紹介します」
    「えっ、要らない……」
     ヒースは分からなった。なぜ自分は取り調べを受けているのだろうか。なぜ後孔の怪我を異常事態かのように捉えられているのだろうか。普通そうなんじゃないのか。
    「玻璃だってお尻痛いでしょ?」
    「オレが怪我させるワケないじゃん」
    「リコは黙ってて」
     食い気味に反論してきたリコを雑に扱い玻璃を見る。リコのことだ。本当は玻璃に無理をさせているのだ。そうに決まっている。しかし玻璃の目には否定も苦しみも浮かんでいない。それどころかリコの発言を肯定しているように見える。なんてことだ、恋をすると人はここまでダメになるのか。
    「なにやら失礼なことを考えているようですが、リコの言うことは正しいですよ。確かに男同士ですから多少の痛みは伴いますが、薬が必須とは限りません」
     玻璃の気遣いと哀れみを含んだその言葉を聞いて、ヒースは頭が真っ白になった。
     
     
     次の日。ケイは浮かれていた。それはもう浮かれていた。狭っ苦しい電車の中で他者からの視線を浴びても気にならないくらい心が晴れやかで素晴らしい気分だった。答えは簡単。ヒースからのお誘いがあったから。
     ケイとヒースが交際を始めたのはごく最近のことである。もとはセックスフレンドとも呼べないほど爛れた性関係を持っていたが、そう有り続ける努力をする日々にも限界が訪れた。細くても確かに成長した肉体に数奇な人生を歩むがゆえの陰鬱とした色気。それに反して幼い頃と変わらない不器用な笑顔。哀れで申し訳なくて、どうしても離れ難い存在。
     もちろん、無事に生きてくれるのであればどこか遠い地に越したって構わない。もう二度と顔を見合わせない覚悟はとっくに決まってる。しかしヒースはあまりにも無謀で無防備で、自身の命に興味がない。そもそも生い先短い身だというのに己をリリックを刻む道具程度にしか捉えていないのだ。生き方を決める権利など持ち合わせてはいないが、そこまで自身を粗末に扱うのならばその身も心も自分が貰い受ける。
     そう告げた時ヒースは絶句していた。そんなことを言われるとも、愛されているとも思っていなかったのだろう。まるで化け物を見るかのような目つきだった。だがそれで構わない、今際の際にでも、ほんの少しだけ理解してくれれば。
    「だが……伝わってくれたか?」
     今すぐうちに来て、なんて可愛いおねだりをされたのは初めてだ。やっと、少しは信じてくれたと思ってもいいのだろうか。
     
     
    「お茶よし、ケツよし」
     昨夜は驚いた。同僚の濡れ場未遂に遭遇した上自身の置かれる状況がおかしいことまで指摘されてしまったのだ。あまりにもショックで別れが頭をよぎったが、まずは話し合えという玻璃の発言のせいでこんな場を設けることになった。尻の準備をしたのはケイと会うといつもそうなるからだ。
     心身ともに寄越せと言われた時は驚いた。たかだかセックスフレンドに恋人なんてご大層な名をつけて縛りたいのか。ちょっと独占欲が強過ぎやしないか、と。けれど関係の名を変えて以降ケイは存外優しく、こちらを積極的に甘やかしてくるようになったと思う。ボロボロのソファを買い換え、身体の不調が出ないようあらゆる面から手と金を出してくる。セックス以外は全て優しい。そこまで伝えたところでと玻璃は何かに呆れていたが、理由を聞かせてはくれなかった。リコも、とにかく話し合えとだけ。
     話し合いなんて、したことはあっただろうか。いや、ない。あれの話に聞いてやる価値なんてないと思っていたから。けれど、少し。ほんの少しだけでも聞いてやればあの二人のようになれるだろうか。彼らだって完璧ではなさそうだったが、自分の知る中では一番まともな恋愛をしているような気がする。
    「ああなれたら、いいのかも」
     正直、ヒースは自身が抱くケイへの感情に名前が付けられずにいる。Bに抱くような仲間意識はなく、過去を許せる気もしない。けれど手を伸ばしたくなる。時折苦しそうに歪むその瞼に唇を寄せ、形の良い頭を撫でてやりたくなる。でも彼はきっと自分を好いていない。好きならどうしてこちらが怪我をするセックスを続けるのだ。
     黒い渦を裂くようにチャイムが鳴る。どうやら着いたらしい、スマホにも連絡が入っている。ドアを開ければ問題が飛び込んでくる。ステージ以外ではあまり使わないこの口は、きちんと動くだろうか。
     
     
     解錠音もなくドアが開いたことにケイは眉を顰める。日本だって物騒になってきているというのにどうしてここまで不用心なのか。咎めれば拗ねるから心配だと言うことも難しい。
    「……いらっしゃい」
    「ああ。邪魔する」
     邪魔するなら帰れと出かかった言葉を飲み込む。帰らせてどうするのだ、帰してはいけない。そう分かっていてもちょっと反発したくなる。
    「上がって」
     出迎えついでにキスをして、手を引いてやればよかっただろうか。
     それができたら苦労しないが。
     
     
    「座ってて」
     ケイを部屋に通し、冷蔵庫で冷やしておいた緑茶をグラスに注ぐ。自分の分はマグカップだ。普段使わないものを使おうとするからこうなる。盆は辛うじてあったからそれに乗せ、溢さないよう運ぶ。正直手で持って運んだほうが早いが、もてなすのならこれが正しい。
    「はい、お茶」
     す、とグラスを差し出すとケイは驚いたような顔をした。こういったことを自分にされるのが初めてだからだろう。仕方ないじゃないか、いつもお前がやってしまうんだから。
    「……飲んでよ」
    「あ、ああ。いただこう」
     どうやらこちらが思っている以上に動揺しているらしい。珍しく言葉に詰まったような素振りを見せ、ぎこちなく茶を口にした。喉が二、三度上下する様子を見届け、ようやくヒースも口をつける。ただの市販の茶だ。格別に美味いなんてことはない、けれど嫌に乾いた喉に染み入って、迅る心を鎮めてくれた。
     出迎え、座らせ、茶を出した。もてなすと言う言葉の中に含まれる行動はすべて取れただろうか。それなら、次はなにをしたらいい? 簡単ですよ、本題を切り出すんです。バカ、まずは雑談とかしろよ。そんな掛け合いをしていた二人が脳をよぎる。分かってる、そうするべきであることは。
    「ヒース?」
    「っえ、なに」
    「貴様が暗い顔をしているから話しかけたのであろう」
     そう言ってケイはこちらに手を伸ばし、眉間の皺を伸ばそうとした。温かい指の腹が優しく撫でてくるから、どうすればいいのか分からなくなる。そんな優しさは見せるくせにどうしてセックスは雑なんだ。
     ちゃんと聞くべきだ。リコと玻璃のように話し合って解決するべきなのだ。だけど、結局こうなってしまう。
    「っ、」
     全力で力を込めて押し倒すと、ケイは案外素直に倒れてくれた。ケイに買い与えられたソファは埃が舞わず、こんなことをしても咳き込まずに済む。それが仇となりケイは押し倒されているわけだが。
    「抵抗、しないんだ」
     ケイは女じゃない。それどころか自分よりも体格がいい。抵抗できないはずがないのだ。それなのにどうして、この先を期待したから?
     弾みで割れたグラスの音だけが、鮮明に響く。
    「いいよ、それなら。オレが動いてやるから」
     ただ優しさの範囲を広げてほしいだけなのに言えない。そんな言葉知らない。なんでも分かったような顔したアンタが察してくれたら早いのに、アンタのせいでこうなるんだ。
    「ヒース、なぜ泣いて」
    「ッアンタが! 違う、おれ、は……」
     この続きを、どうか理解して。
     そんな思いが伝わったのだろうか。ケイは上体を起こし、そのまま抱きしめてきた。力強く縋るように抱きしめられ、堰を切ったように涙が溢れる。悔しいのに止まらず、ケイのジャケットに涙が染みる。
    「泣くな」
    「うるさ、いっ! アンタが、ッ」
    「俺がなんだ」
     ケイは困惑していた。恋人からのお呼ばれにウキウキで飛びついたのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう、と。思い当たる節はない。けれど何かあるからヒースは泣いているのだ。
    「泣き止んでからでいい。だから話してくれ」
     全てを理解することなんてできないからどうか。不器用で支離滅裂な言葉でも全て受け止めるから。泣きじゃくる姿も昔と変わらない。ただ背中を撫でてやることしかできない自分も、変わってはいない。
    「おれっ、は、ただあんたと、」
     恋人になりたいんだ。
    「……は?」
    「だから! せふれじゃなくて、恋人がいいっ! あの二人みたいにっ、ちゃんと、ッ」
    「待て、ヒース……」
     とっくに恋人になっているはずじゃなかったか。


     確かにあの時伝えたはずだ。身も心も貰い受けると。なにそれ恋人ってこと? と聞いてきたのはヒースだ。それなのにどうして今更。
    「名前だけ恋人にしても意味ないっ、ずっとセックス痛いし、セフレと何も変わってない!」
     そう叫ぶと疲れたのか、ヒースは肩口に顔を埋め荒く深呼吸をした。過呼吸を起こしてしまわないか不安なケイだが悩みはそれだけではない。
    「ヒース、貴様が何を勘違いしているのかは知らぬが、俺たちは付き合っている」
     ひとつひとつをはっきりと発音したが、ヒースは依然として顔を上げない。仕方のないやつだとケイは呆れる気持ちを押し殺し、ヒースの発言を振り返る。
     あの二人とは誰だろう。どこの誰の影響を受けたのだ。それにセッ……その単語を思い出した途端、急激にケイの脳が冷え出す。
    「ヒース、貴様怪我を、」
     萎れた身体を引き剥がし正面から顔を覗き込むと、ヒースは酷い顔をしていた。けれどそんなことより大切な話がある。
    「……そうだよ」
    「いつからだ」
    「アンタとヤって四回目あたり? 後ろが避けて、ずっと、薬塗ってる。アンタ気づかないんだもん。……恋人とか言われても、何も変わらなかった」
     そこまで言われてケイは初めて自分が何をしてきたかを知った。立派な暴力である。
    「……すまなかった。そんなことになっているとは」
    「ねえ、ほんとに気づかなかったの」
     鼻声のヒースがじろりとこちらを睨みつけるが、本当だ。ケイは必死で頷く。
    「本当にすまなかった。だが、貴様を傷つける意思はない」
    「じゃあなんで、」
    「貴様を前に、平静など保てないからだ」
     大切にしたいとか優しくしたいとか、そんな気持ちも当たり前に持ち合わせている。けれどそれよりもずっと強いのだ。ヒースの全てを手にしたいという気持ちが。片手で事足りるほど少ないケイの宝だから、彼自身も扱い方が分からない。
     そしてヒースも、痛みを訴えることをしなかった。それが普通なのだと無意識に刷り込まれてしまったから。
    「謝って」
    「誠に申し訳なかった。詫びにどんなことでも受け入れよう」
     別れだってなんだって受け入れる。治療費だって全て持つ。そんなケイの覚悟を知ってか知らずか、ヒースはぐちゃぐちゃの顔に笑みを浮かべた。
    「じゃあ、オレのこと好きって言ってよ。そしたら次はグラスを買いに行く。ちゃんと、アンタと、」
     恋人と呼べる関係になりたい。
    「ねぇ、オレさ、アンタに好きって言われてない」
    「好きでは足らぬ。愛している」
     それならいいや、と、ヒースはケイに唇を寄せた。


    「ヒース、お疲れ様です」
    「玻璃。お疲れ様」
     ケイとの大喧嘩、もとい一方的なヒステリックから一週間が経ち、ヒースは久しぶりに玻璃の顔を見た。キャストが増えたぶんシフトが重ならない日も増えたのだ。
    「そうだ。玻璃に渡したいものがあるんだ」
    「なんですか?」
    「これ」
     ころん、と玻璃の手のひらで転がったのは五センチメートル程の塗り薬。そう、あの日受け取りを拒否されたものである。
    「っ、不要だと伝えたはずです。それに、持っているべきはヒースでは?」
     玻璃の中でのケイはどんな人間になっているのだろう。彼の目つきは厳しく、機会さえあればケイを糾弾するだろう。でも。
    「ううん。オレも要らない」
     どうしても歯止めが効かなくなる、と困った顔をしていたケイに加減を覚えさせ、キスをして愛を囁きあった。まだ未熟ではあれど、もうあんなことは起きないだろう。
    「それはよかったですね」
     そう祝福してくれた玻璃に、ヒースは柔らかい笑みを返した。
     
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