村正の修行がムリすぎてダダこねてたら蜻蛉切に差し押さえられた審神者の話「失礼致します!」
「えっ、ちょっ、ウワ!何すっ!」
蜻蛉切がふとしゃがんだかと思ったら、脇に手を差し入れられ、ぐんと持ち上げられた。それどころか、更に「暴れませぬよう。」と言いながら私を小脇に抱えたのである。嘘だろ。
慌てて足をばたつかせてもつま先は空を切り、蜻蛉切の袴を掠めただけであった。
「さ、村正、今のうちに!行け!」
更に聞こえてきたのは村正を援護する言葉で、まさかここに来て蜻蛉切が裏切るなんて思いもしなかった私は、ガーンと口を開いた。
「ありがとうございマス、蜻蛉切。それでは主、行ってきマスね!」
「えっ、ちょっと待ってよ!……ムラマサ!絶対帰ってきてよ?!約束だからね?!帰って来なかったら審神者泣いちゃうからねーーーーーー?!」
私の叫びをあえて無視してルンルンのスキップで遠ざかる村正の後ろ姿。
行ってしまった……と謎の消失感で蜻蛉切に抵抗する力も収まってしまった。
「なに、心配はご無用。あやつは主に合わせて調整してくるだけですから。」
そっと開いた口を戻され、しょぼくれた私を見てなんだか孫を見るような目で笑ったのだった。