月草の、籠を背負い、野道を行く。昨晩までの雨はもう止んだようで、黒い雲ははるか彼方。風の生ぬるさに眉を顰め、ああ、夕陽が落ちる頃にはまた一雨くるなと高坂は足を早めた。
緑が生い茂る土手の中に目当てのものがある。青く小さな花を咲かせるのは露草で、花の汁は口の中の腫れ物、目が赤くなった時、また尻が切れた時などに搾って塗ると良い。葉を乾燥させたものを煎じて飲めば、熱が出た時や腹を下した時に効く。
薬とは別に、露草はクセがなくて食べやすいから若芽を摘んでお浸しにすると美味しいのである。せっせと柔らかい葉を摘み、籠に入れた。この辺りは群生しているようで、沢山あるのが嬉しい。花芽は綿の布で作った袋に入れて、一通りを摘んだ。
5559