ヒナとえむ ふぅ、とひとつ息を吐き、えむはワンダーランドの木陰で幹に身体を預ける。目の前ではぬいぐるみ達が楽しげに遊んでいて、先程までえむも其処に混じっていた。少し休憩、をしながら彼女はぼんやりとぬいぐるみ達を眺める。司の想いから成るというあのぬいぐるみ達は、幼少期彼がショーをする上で使っていたぬいぐるみが元となっているらしい。そんな彼、ワンダーランドの創造主、天馬司は、この間足を捻ってしまって、えむは大層心配になった、というのが現在頭に浮かぶ一番濃い記憶である。あの後、司は直ぐに家に帰された。ショー練習の最中であったが、痛みで集中できないままやるよりは、まず治すことに尽力してもらった方がいいという類の判断だった。司もこれには納得し、素直に帰っていったのだ。
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