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    mary

    @mary_nightdive

    文字を書くジャンミカの民
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    mary

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    2024/5/30〜6/1開催「ジャンミカ発表会」にて展示した過去のSSS

    #ジャンミカ
    janMika.
    #ジャンミカ発表会



    ——どうせ叶わない想いなら、いっそ最期まで貫いてみたい。
    掲げたブレードの刃よろしく、煌めく願いは生きた証。
    対峙した巨体に視線を据えた。
    視界の隅に、「あいつ」を抱えた黒髪が映る。
    一秒だけ目を閉じた。
    …ああ、それでいい、…上等だ。
     「エレンを守ることは私の使命」
    そう言うお前を守ること、それが俺の使命。


    身勝手な論理
    (2015/1/5)



    歓声と、拍手の中心に彼女が居る。
    遅れ入った食堂での光景に、首を傾げた俺にコニーは言った。「今日はミカサの誕生日なんだと」

    講義の中休み、裏山へと走った。
    金も時間も、勇気も足りねえ今の俺だが、それでも、今日の日だけは——
    「——ッ!」
    二月の陽に、きらり煌めく一輪の花。
    その優美に、胸はとくりと音立てた。


    「…エレンなら居ねえぞ」

    「どうせ部屋で寝てんじゃね?」

    「ああ、そうだ確か教官室に呼ばれて…って、……はァ?そうじゃないって、…なら何だよ」
    「……」

     何…って、…これは、ジャン、
     貴方からなのでしょう——?

    …そう、切り出す直前に風が吹いて。
    彼から、この手に携えた一輪と同じ、甘く優しい匂いがした。


    純恋花
    (2015/2/10)



    明け方まで降り続いていた雨はすっかりと上がった。
    前線からの報告を携えた早馬が戻ってくる。
    鞍上の兵士の顔は暗い。予想通りの苦戦なのだろう。
    仕方が無い。私たちに残された道は、もう、これしか———。
    「じゃ、お先に」
    まるで、団欒室からひと足先に寝室へと向かうときのよう、そんな怠さと軽やかさを乗せジャンが言う。
    戦場へ飛び立つ前の彼のルーティン、装備に、順に手を触れ確かめる…その最後に撫でられるブレードの刃。
    なまあたたかく吹く風に、淡色の髪が揺れた。
    「お前は、死ぬなよ」

    こちらへは僅かも向けられなかった眼差しを、…あの色を、既にもう思い出せないのはどうしてだろう。
    団長の、出陣を知らせる咆哮が轟き、ガスの匂い、自由へと疾る軌跡が視界を埋める。

    その日の空は、青かった。


    青に散る
    (2015/2/12)



    「はァ?!だからそうだって!貰ったよ俺も、何度も言わせんなよ」

    「どうせアレだろ?つまりエレンの、…練習台」

    「ったく、作りすぎたからとか勿体無いからとか、わざわざ言わなくたって…。大体が、ただの義理なら呼び出すとか止めろっつーの!…まじで、ミカサの奴、俺を何だと思って……って、何だよ。何ニヤけてんだよ、アルミン」
    「……」

     だってジャン、その形。よく見てみなよ。
     皆のとは明らかに、違うんじゃない——?

    僕のありがたい気付きなんて聞く気すら無いジャンの手が、その口調とは真逆の優しさで丁寧に、丁寧に包みを剥がし取る。
    現れた綺麗なチョコレート…、僕らの、ただ丸められただけのそれとは違う「ハート形」。
    至極大切に齧って彼は、「…甘めえ」と頬を赤らめた。


    コイノカタチ
    (2015/2/14)

    当時よく書いていた現パロ設定で。



    こんな関係を始めてしまってから、もう、どれだけの月日が経っただろうか。

    歪な染みが幾つも数えられる天井から、ようやくに視線を外した。裸のままの胸元を、薄い上掛けで覆うようにしてベッドから起き上がる。
    外は、果てない夜の闇。
    枕元から、儚げな火がちらちらと揺れる燭台を取り上げ、冷たい木床に足を降ろす。硝子窓の向こうをじいっと見つめていた横顔が、静かに音を紡いだ。
    「……すまん」
    声の主へ、視線など送らない。それでも、床に散らばっていた衣服の類いを手早く身に付けるこの視界には、どうしたって映り込む淡色の髪……けれど、彼もまた、こちらに視線など寄越しては来なかった。
    「足首…、右の。…強く掴みすぎたな」
    「…」
    「捻っていたんだったな。…報告は受けていたはずなのに、忘れていた」
    「…」
    「言い訳をするつもりはねえが、このところ、つまらねえ事務ごとが山積みでな。追われていたんだ。肩書きを得るってのは、面倒臭せえもんだよ、全く」
    「…」
    「…ッま、まさか悪化なんてしてねえよな?明日からの遠征は、お前の力がなきゃとても無理」
    「——余計な心配はしなくていい」

    放った声は、想像以上の鋭さで辺りを切り裂いた。闇に隣する窓際で、とうとうに動いた淡色の髪。二人の視界が重なって…つまりほんの僅かに視線も交わって、…けれどその瞳を、私が幾瞬も見つめ返せる訳などない。火照りを鎮めた身体の奥から…喉元へ、今晩も、昏く淀んだ重たい何かが迫り上がった。
     (……ねえ)

     どうしてそんな目をしているの?
     どうしてそんなにも痛んだ調子で、眉間に皺など寄せたりするの。
     半刻前までの、あの、狂ったような高揚を、…せめて、私がここを去るその瞬間までは宿していて…欲しいのに。

    喉に引っ掛かり、膨れ暴れる感情が、どうか助けてと悲鳴を上げている。
    「余計な心配はしないで。忘れないでほしい。…私たちは」
    両の目を、一瞬だけきつく閉じつける。他の誰でもない、自分自身へ向け、言い放った。
    「私たちは、ただの同期なのだから」
    「……」

    闇へと再び視線を戻し、「…ああ、良く分かっている」…そう呟いた横顔が、みるみると暗く鋭く…冷えていく。
    押し黙ってしまった彼の背に、残した爪痕だけが知る私の心。
    この脚とは裏腹に、彼の前、決して開けなどしない本当の心…その純朴が、甘ったるくて吐き気がした。

     どうして始めてしまったのだろう。
     どうして私、今更、彼を愛——

    「……」
    寂れた町の古い安宿、薄い木製の扉を音も立てずにすり抜ける。結局のところ手放せなかった赤いマフラーに、鼻先までを埋めたなら、そこから香るのはもう、エレンじゃない……彼の、——ジャンの肌の匂いだから。

    風が冷たく吹き付ける夜、闇に紛れて私はひそりと泣いた。


    夜闇に紛れて
    (2015/4/9)

    身体は繋がれど心は繋がらない二人。
    当時のサイトゲスト様から前後を読みたいとのお声をいただき、書き始めたのが「花筐」(@pixiv)でした。



    「お前があいつを信じなくてどうするんだよ」
    弾かれたように顔を上げた。
    朝の、眩しい光の中でその表情ははっきりとは分からない。
    けれど目の前に、短い淡髪の、しゃんと伸びた背…堂々とはためく自由の翼。唇を噛んだ。
     
     …ああ、いつから、こんなにも、
     似合う貴方になっていたの。

    「出陣はまもなくだ。立てよ、さあ、……行くぞ」
    「……」
    深く埋もれていたかったマフラーから、ひと晩ぶりに顔を上げる。頬を射す清涼。ささくれの目立つ指先で、腫れた瞼をぐいと拭った。
    「貴方は、私が思っているよりもずっと、エレンを信じていてくれるのね」
    隣に並び、そう言った私をちらと見て、ジャンは溜め息を大袈裟にひとつ。
    「…いや、そうじゃなくて——」
    呆れたように笑んだ瞳、宿っていた切ない何かは、白い朝陽に紛れて気付けなかった…ふりをした。

     (……俺は、あいつを信じるお前を信じて、…飛びたいだけだ)


    誰が為に飛ぶ
    (2015/5/26)



    「大丈夫だって。上手くやってみせる」
    薄い唇を歪め、怠そうに笑う。
    「念押しに来たのか?こんな時間に。そんな暇あるんならさっさと寝ろよ」
    呆れたような溜め息に、棘のある言葉。
    「お前はいつも通り、…エレンの事だけ考えてろ」
    それら全部が懸命に作られたものだと、気づいている私をきっと彼は知らない。
    巨人の討伐能力だけじゃない。演技の才覚だって、持っていたのは私の方。
    「ジャン」
    部屋の扉を閉めかけた手指がぴくりと止まる。
    「ありがとう」
    作りなどしない、だからこそ言葉足らずになるこの心、拾ったその耳はほんのりと染まった。


    Actor
    (2015.6.9)

    原作単行本13巻、リーブス商会との接触前夜の二人。



    以上、九年前(!)の妄想たちでしたー!
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